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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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裏切り? 盾騎士ネイザーと、くのいち 5

 イクハの方はまだ、キョロキョロと見渡してた。

「ここの死体が無いな」

 タワーシールドもなくなってる。

 砕けた顎と、腐敗した顔によって一見ではそれが、盾騎士ネイザーではないとは断言できないよう、細工した結果、ヒール靴の痕跡が残る複数人の足跡が見つかっていた。

「指輪まで嵌めさせて、リアルに死んだフリさせたから...じゃない?」

 修道士姿の魔法使いの言。

 治癒アイテム士の怪我もあって、敵兵に姿を寄せる事が当時の最善策だった。

 この一群は、ネイザーさんのパーティである。


 どっから()()()()を話すか。

「この足跡は女の方のようだね? まだ、近くに住人でも居たのかな」

 踵の食い込みからの推測し、

 小動物の足跡もあるから、テイマーか魔法使いだろうとの推測するシーフがある。

 邪神教徒の装束で身分も顔も隠し果せたけども。

 パーティらが改めて見渡すと、

「まあ、これ新たな冒険者に見られたら」


「即、攻撃対象だろうな」

 よくもまあ。

 上手く化け切ったものだと感心もする姿だ。

 斥候のイクハだけが、私服のままなんだけど――これは、先行して彼女が潜入してた()()()のようなものだからだろう。

 自由都市にはもともと、結界は無かった。

 いつからと言う具体的な日時がはっきりしないのだけど、ここ最近になって海側の街から徐々に交信不能状態が拡がったという。

 まあ、それでも国は広大である。



 バリヤーナ自由都市国が島大陸の北西端にあるとしても、結界の広さは3分の1程度くらいだろう。

 自由都市市民の往来を妨げることはなく、生活に支障がないので。

 国では()()に結界があることも、気が付かれていない現実。

「不信人というのが幸いしてると思う」

 警戒を解いたイクハが、パーティの輪に戻った。

 提げてた革のカバンから食料を取り出す。

 ネイザーさんらが新鮮な果物に涙してた。

「いつからだ?」


「ん?」

 イクハの質問に首を傾げる面々。

「いあ、いつから食してない?」

 質問の内容を理解した。

 即座でもないけど。

 小首を揺らして、

「こいつの怪我の後からだよ」

 出された食事に手をつけず、保存食の切り崩しで凌いでたと明かした。

 イクハの胃袋は鉄か鉛かの出来なので、出されたものは食ってたけど。

 いや、むしろ喰わない方が不自然だったからだが。

「別に...あ、いあ。そうだな大事を取れば、喰わない方が正解だろ。ただ、わたしからすれば勿体ないことをしたんじゃないかと思うところはある」

 パーティの連中が不思議そうな態度。

 こう、瞬きの多い...

「(顔に掌、額を指で小突きながら)炊事の事なんだけどな、あれ。わたしの当番なのだよ...だから、その。教徒の者たちも、その、何かの儀式の後で供物の分け与えとか、な。そうした食材は一切使ってないんだ。最初は、そうした方がいいかとか...導師たちに尋ねたものだけども」


「ふむ」

 ネイザーさんが食いついた。

 こと食事は大事な話だ。

「――彼ら曰く、供物は気持ちが悪いんで喰いたくないとの言質がある。で、料理スキルがあるって事で、わたしが皆の食事係になった経緯が、だが。(パーティのそれぞれが、各人それぞれ思い思いの悔しがりよう)...えっと、そんなにわたしの手料理が?」


「ああ、喰いたかったよー。ごめんな、全部、棄てて」

 イクハ、歳の頃は19と半年。

 心の奥で“きゅ~ん”って鳴き声が聞こえた気がした。

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