裏切り? 盾騎士ネイザーと、くのいち 1
蒼炎の魔女には念話と、念視が送信されている。
見たものそのまま、ライブ中継しているようなものだが。
何ちゅう高度な技術を。
その結果、ネズミの疑いが確信へと変わった。
パーティが全滅した現場には、伏兵がある。
もっとも、何が起きたのか調査的な人員の配置で。
こちらが再び現れる可能性にも警戒している様子だ。
戻る準備と旋回する中で、
例の斥候を見つけたようだけども――『ご主人、この事は内密で!!』
ネズミから口止めされる。
魔女からの抗議は勿論あったけど、無言だ。
この姿は、
そう! 獲物として捕らえられた態を装ってる。
でも、斥候の目は誤魔化すことは不可能だろう。
ネズミが見つけたのだから、斥候のイクハと言う者も見たに違いない。
あれは/これは...
斥候だと。
◇
ネズミが懐疑的なのは、今までたどたどしかったネイザーさんの口調だった。
斥候の必要性は冒険者らしいと言えば、らしい。
疑惑を抱く事柄ではないんだけど、主人と共有しているネイザー・へドンの記憶とは少し趣が。
これは、魔女の主観だ。
或いは一方的な感情かも知れないけども。
それならそれで、主人は彼に好意を抱いてた――だったら、ゾンビの彼も清々しい好青年っぽいのではと考えなくもない。信用させるために、いあ、抱き着く必要はないのでは。
悶々と考えこむと、どんどん疑念が産まれるのだから。
疑うって仕事は...
腹が減る。
鳥が、飛びながら虫を捕まえてくれた。
「喰うかって?」
やや困った表情になるネズミ。
彼、一応、菜食主義者なの。
「いらない訳じゃないよ...ありがとう」
魔女がネズミ話しかけるように。
ネズミも他の動物との会話は、念話で行う。
魔女とのチャンネルが混線しないよう、ちゃんと切り替えているんだけども。
わりと優秀なパートナーのようだ。
「高空からの観察が出来たのは重畳だけど」
鳥が鳴く。
ネズミが首を何度か振って、
「地上からも観測したいけどね。相手は手練れの様だから、近寄れそうにもない」
見つけた斥候は本物だ。
あれも、単独で逃走中ならばコンタクトを取りたい。
しかし、ゾンビのいう事を鵜呑みには出来ない雰囲気がある。
これはまだ、疑惑の段階。
でも、十中八九。
屋根裏部屋に戻ったネズミは、魔女から熱烈な歓迎を受けた。
イクハを見つけたからではない。
無事に帰って来たからだ。
「で、どうだった?!」
流暢な会話が出来るようになっている。
魔女曰く、蘇生に使われた新しい肉が馴染んだからだというのだけど。
記憶の中のネイザーさんは軽口のタイプではない。
「この子との感覚共有では、何も」
嘘をついた。
正直に言わなかっただけで、心に傷が出来るのだと知る。
それでも、ネズミからは称賛された。
今は、それでいいんだよって。