復活の盾騎士、ネイザー 5
さて、如何にして動くか。
配下のネズミが食い物を調達してきた。
生理現象がないネイザーさんは、ここでも自分がモンスターであることを理解させられて。
沈み込む気持ちと、吐き出す空しい言葉。
「食欲モないカ」
いや、血の滴る生肉には食いつきが良かった。
ウサギとか、鳥などの小動物だ。
ゾンビ特有の目の色にぞっとさせられたけど。
「大丈夫ダ! 君ヲ襲う気はナい」
食い物としての意味だが。
男女ふたりだけとなると、性欲が無くてもこう。
いかん、いかん。
彼には愛妻が。
「そレだが、判然としナいと言ウか。指にアる指輪にハ、愛着ガあるノだが帰りヲ待っテいてくレていルとは思えヌのだ。記憶が曖昧ナのか、或イは欠落シてしまっタのか」
やや悲しい話だ。
強く思っていれば叶うものだと思われる。
いや、そうであって欲しいという願望でしか無いんだけど。
思い過ぎて妄想になることも多い。
「ま、記憶なんて蘇生時の後遺症みたいなもので、一時期は忘れてるもんだっていいますよ」
襲撃時のは、鮮明だ――と、彼は語るんだけど。
これがまた空しくなる要因で。
生死がかかった激しい戦いだったから、記憶が鮮明であるのは致し方ない。
だって断末魔の激しい衝動みたいなものだ。
記憶と言うよりも、記録として焼き付いたものだろう。
いくつかの確認作業で。
パーティ全員を蘇生られなかったのは、状態の問題であると説明した。
そこはネイザーさんも理解してくれた。
「言っては何だが、斥候だったイクハは難しかったか?」
ん?
誰ですその方。
「いやな、全滅してしまった手前勝手な申し出だと分かって入るんだが。やはりこの戦力では、遠くを見渡せる“目”が必要に思われるんだ。(一流の冒険者パーティにはシーフか、スカウトが居る。いや、居ない方が不自然ってのが多々...)出来れば、その使い魔に現場の確認を頼めないだろうか?」
魔女の目でも一通りは、見た。
それでもタワーシールドを棺桶代わりにした躯で、視野が狭窄したかもしれない。
これが知人だと分かった時は取り乱しもした。
そうした幾つかの思い当たる節を胸中に抱きつつ。
胸の内のもやっとが、そのパーティの惨状に雲ったものだと思い込みながら、使い魔を現地へ派遣した。
主人と違って、使い魔のネズミは慎重だった。
先ずは、爆心地となった箇所を念入りに調べ、肉片の少なさに疑問を持つ。
巻き込まれた者はパッと見よりも少なく、新鮮ではない。
考える、考える――
空を飛ぶ、鳥に声を掛け。
現場を上空から監察することにした。