復活の盾騎士、ネイザー 4
「ネイザーさん、何があったんです」
脅威は去ったので、一息つくことにした。
状況から見れば未だ、安全とは程遠い。
死体が一つ無くなっていたのだから、間抜けでなければ、術師による復活が行われたとみるだろう。
ネイザーさんが蘇生した時に、魔法陣も消えた。
それ以外の痕跡は残してないけど。
邪神が見れば、魔術の痕跡みたいなもんは見えるかもしれない。
だから術者と思しき点を追わせて、導師が吹き飛んだのだ。
彼には“何かが居る”感覚のみだ。
「突然ダったンだ。加護ヲ失ッて2、3日目...遠巻キに見らレてイる感覚ハあっタ。ただ、加護ヲ失っタだけダと思ってタから、いつモのよウにスキルが使用でキると錯覚シてたンだな」
侮ったわけではない。
襲撃者も、襲撃する...それこそ1秒前まで、自分たちに如何ほどのアドバンテージがあるか。
そこを探っていたのだろう。
蒼炎の魔女を襲った者たちほど、手練れていなかったことになる。
「じゃ、私たちが遅く入ってきたわけですね」
「君たチもか?」
少し流暢に話せるようになってきた。
やはり顎の筋肉が衰えていたようだ。
もう少し触診すべきだったと反省しつつ。
「その...生理現象の事なんですが」
ネイザーさんが自身の股間を見る。
つられて魔女もみた。
「うム、無いな」
「あ、できれば具体的に」
これは生物学的な調査であって。
や、やましいことは何一つ。
きょ、興味がないとかそういうのではなく。
「小水トか大ノ方のコとだろウ?!」
「あ!? ああ、は、はい」
赤面している魔女がある。
ネイザーさんは、吹き出しつつ。
「冗談ダ。多分、そっチの事ダろうと、察しハついてタが」
少しだけ間を空けて、
「残念ながラ、性欲モ湧いてコない。君を懐ニ招いタ時も、少しハ自分にモ人間らしい何カが、残ってイるのでハと期待もシていたのだ。が、私は肉体かラ離れ過ぎてイたのだな」
自分がゾンビになっていることを自覚していた。
これは冒険者の勘であろう。
魔物に対する直観とでもいうか。
「今は治せません」
「はっきリ言ってクれるナ」
魔女は頷き、被ってた帽子をくしゃくしゃに握りつぶす。
悔しさからもある。
魔法使いだから何でも出来る訳じゃないと、卒業後に何度も、何度も突き付けられた。
で、少しはあたしのことを、不憫に思い起こしてもくれている。
あの時、先輩もこんな思いだったのだろうと。
ああ、それね。
嬉しくはないけど、学生の頃から何でも出来てた優秀な後輩と、比較されたくないんだよ。
もっと惨めになるじゃんよ、あたしが。
「でも、ここを出たらきっと」
「ソの時ハ」
いつになるかはわからない。
でも希望は持てる感じがする。
そう、希望を持つことは悪い事じゃない。