ようこそ、バヤリーナ。おいでませ、異教徒さん 5
ネズミの案内で、安全なルートでもって。
冒険者たちのもとへ。
正直に言えば、元冒険者のもとへと赴いた。
なんで、危険を冒してそんなとこに行ったのか。
そりゃあ建前上、生存者があるかもしれない。
使い魔のネズミは『あいつらはコト切れてるよ』と教えてはくれたけども、そこは単なる動物の言葉で一概には信用できない。例えば息を殺してるかもしれないし、あるいはコトを大きくしないよう、静かに仮死状態を装う魔法なんか使ってる可能性もある。
だから...
いや、本音を言えば寂しいので仲間になりそうなのを探しに行ったのだ。
現場についてみると――
激しい戦闘の後が見て取れる。
パーティの構成は、野戦用のもの。
斥候2、弓1、精霊術師1、軽戦士3...いや、大柄な男が実に気になる。
だから...彼を軽戦士という括りから外して、
軽戦士2と重戦士1、とか。
この重戦士は盾持ちのようだ。
覆い被さってた立派な盾を剥ぎ取って絶句。
知り合いだった。
マジかよ、ネイザーさん!!?
ネイザー・へドン、魔法詠唱者協会に雇われたベテラン冒険者。
彼の肩書は“ゾディアック・シールドマスター”、一介のいあ、冒険者なんていう不安定な職業とは違って、もともとはどこかの城に公僕として仕える立派な、騎士の一人だという。
えっと...盾騎士だったかな?
――のはずだけど。
なんで、こんなとこに。
蒼炎の魔女も知り合ってたクチ。
◇
巨大な盾が棺桶の蓋のような役割を担ってたから。
ガチで肉体の方は状態がそこそこいい。
まあ、盾の脇から覗いてた足の一部と、利き腕のような部分は腱から少しが、なくなってるような気もしないでもない。
「けど...」
『けど?』
ネズミが頭を持ち上げて、不思議そうな色へ。
つぶらな瞳がくるっと動いたような気がする。
この表情で、昔は非常に大爆発な人気を博した――が、ペスト菌の大量発生で、魔法使いだけじゃなく一般人まで世界の大半がひどい目になった。うん、死霊魔法術師にとっては普段、手に入らない死体が大量に手に入ってうれしかったとか、話に聞いたけど。
そんな彼ららもついでに迫害されたという。
まあ、それはいいか。
「この地域は乙女神の加護が喪失しているから、さ。もしかすると......魂魄の一部とか残ってさまよってる可能性があるかも。じゃ、さあ! なんか肉集めてきて!!!!」
肉?とかやや不可解な声色がネズミから聞こえたけど。
欠損部位を欠いたまま蘇生させると、歩けもしないし動きも鈍くなる。
せっかく、話し相手を作るのにお荷物かゾンビにしても意味がないし。
彼には生前通りの騎士として、前衛をお願いしなくちゃならない。
ま。
そんな意図まで使い魔に説く必要はないと思ったけど。
持ってきた肉が、同属のドブネズミだったのを見て、考えも変わる。
「ごめん、わたしが悪かった」