ようこそ、バヤリーナ。おいでませ、異教徒さん 4
蒼炎の魔女の食卓に色どりが増えた。
屋根裏に陣取ってたら、ネズミの同居人が増えたのだ。
彼女は、魔法学校在学中にテイマーを習得してた。
なんでテイマーなのか。
一応、学校からも強く勧められるスキルのひとつで、職業の方のソレではない。
本職のテイマーと比較されると...やや分が悪いというか。
そうだなあ。
なんでこれが必要かを、語らなければならないか。
魔女だから“使い魔”を持てるってのは語弊がある。
妖術師や、精霊使いに死霊術師に...えっと、ゴーレムマイスターと賢者も。
みんな任意の使い魔を持つことが出来る。
で、契約できる素質めいたものがあるのに、それの行使をしないのか。
コストが半端ない。
金額的な悩みが直接的だけど。
カネの無い連中は、自分で捕まえに行く必要があるからだ。
そこで、テイマースキルが必須なのだ。
自前というのは...
代表的な生物――
1)猫
近所にあるノラ猫が対象になるが、フリーであるかどうかは互いに条件の潰し合いも含めて要相談。
2)ネズミ
不衛生という事で、人気が下火。
少し前(300年と少し前)までなら円らな瞳が可愛いと、人気があった。
3)梟
店売りが殆どで個性持ちが少ない。
野生の方は、術者がエサにならないよう、気を付けなければならない。
4)犬
実家がブリーダーってのがわりと多い。
たまにワイルドドッグ種のオオカミ犬が出回るが、高額なので使い魔には向かないとか。
5)その他枠のクマ
世界にいる限られた魔法使いに、クマのような大型肉食獣を使い魔にするものがある。
基本的に屈服させて服従させるか。会話にもっていって相互理解の上で契約。
その時、テイマースキルがあると便利だと言われた。
まあ、そういうわけで。
蒼炎の魔女は、テイマースキルのエキスパートになったが。
使い魔なしで今に至り。
新しいパートナーにネズミが加わった。
「木の実をくれるの? これ本当に食べれるのよね???」
やや不安だ。
ネズミは自信あり気だが。
実は赤く光るリンゴの様で、それっぽくも見えなくはないけど。
ああ、やっぱり不安だ。
このネズミはそのまま齧りつけ! 大丈夫、喰える。なんなら自分が味見してやってもいいと...自信ありげなのはよく分かる。スキルの恩恵か、動物との会話に困らないのがテイマースキルの凄いところだ。
このスキルが魔法使い寄りのものだと説明されても、納得が今ならできる。
なんと言うか。
考えてることが読み取れるってのは、実に魔法らしい。
で、だ。
ネズミが言うには――この木の実は冒険者っぽいのがもってた革のカバンから拝借したものだという。
うん、それ早く言ってね。




