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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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ようこそ、バヤリーナ。おいでませ、異教徒さん 2

 バヤリーナ自由都市における市民の魂は、邪神の復活の糧へと消費されていた。

 世界の希望である“勇者”たちに見せつけるように。

 今日もまた数十の首がそらを舞う。


 おいでませ、バヤリーナ。

 おこしやす、自由都市――そんなフレーズの看板があちこちの街道に立てかけられている。

 今や昔の楽園都市か。


 さてさて。

 ひとつ疑問に思ったりはしないだろうか。

 なぜ、邪神なのか。

 なぜ、この地なのか。


 そして...

 この「なぜ」はどうして生まれるのか。

 この疑問は、囚われている6人目の最後の勇者から、生じてた。



 勇者たちの待遇は、可もなく不可もなく。

 いや、劣悪な環境においても彼らが『堕落』する気配がない。

 これは不思議な事だ。


 乙女神の加護の届かない不毛地帯にあっても、変わらず小奇麗に浄化されてた。

 ステータスこそ、橙色に変わって何かしらのペナルティを負っているようなのだが、その事象も含めてまるっと全部、不可解にも()()()()()()にされているのである。

 勇者が6人も同じ部屋にあるからでは?

 そんな疑問が持ち上がったことがある。

 力の束縛、抑制された枷によって彼らは数か月単位で、地方から地方へたらい回しにされた。


 その時、6人目は考えたのだ。

 この結界はどこまでをカバーしているのだろうと。

「ちぃ、ここでもか!!」

 長距離念話が導師の下に届いたようだ。

 6か所すべてをランダムに移動したのにも関わらず、勇者が穢れ堕落することが無かった。

 むしろ、多数から単体になった分、ステータスへの干渉がし辛くなったという報告まで上がった。


 故に――「埒があかん!! 邪神様の神殿に彼らを封じよう」

 数年前に学術院の者が掘り起こしたという、遺跡のこと。

 旧時代文明の遺跡であることは、その当時からも読み解けた。

 文献は、中央大陸にあった王国の所蔵品。

 勝手に持ち出してきた学芸員の手によって掘り起こされたのだが、その学芸員は今や、邪なる神の依り代となったようで「魂が足りぬ、渇きが満たせぬ。贄をもっと極上の贄を! 勇者の魂を喰わせろ」とか叫んでいた。

 遺跡の中の石棺室という辺りで、石棺という長方形の石の上に座ってた。

 目は虚ろに窪みとなり。

 顔色はひどく、青白い。

 金色の髪が痩せて、毛根から抜け落ちている様。

 地肌が見える頭部に突起したものがある。


 それ、もしや...角?


 学芸員だったものから、

『ひゅ~』

 なんて声にならないものが漏れたような気がする。

 いや、吸われたのだ。

 身の回りの世話を焼いてた、信徒がずるっと石畳の上に骨なしが如く崩れ落ちる。

 精気の無くなった肉と皮だけのような存在となって。

 皆が恐怖する。


 ああ、これが邪神なんだ。

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