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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
281/511

ようこそ、バヤリーナ。おいでませ、異教徒さん 1

 蒼炎の魔女は、屋根裏のある空き家に飛び込んでた。

 息をひそめて3日ほど。

 持ってきた保存食は、水筒1本に乾パンと干し肉が3切れほど。

 ただ、肉の方は顎がしばらくガタつくほどの硬さがある。

「なんでこんな肉にしちゃったかなあ」

 ひとりで寂しく愚痴る。


 最初は、ひとりじゃなくて。

 多数というほどの数じゃないけど、仲間があった方。

 みるみるうちに少なくなって。

 気が付けば、

()()()だけか...」

 息をひそめる時は仮死状態めいた息継ぎで。

 緩める時はとことん緩める。

 このメリハリがあるから、敵地の中でも生存できていた。


 ここでひとつ分かったこと。

 外の連中にも伝えたいことの一つでもあるんだが。

 “バリヤーナには人が居ない”

 という事実。

 これは文字通り、大都市であろうとなかろうと、人の影と言うのが極めて少ない。

 むしろ、いないと表現した方が正確かもしれない。



 屋根裏の隙間から通りを窺う。

 犬らしからぬ化け物を、従える導師の姿――邪神教では一般的な“神父”のような者たちをすべて“導師”と呼ぶ。ふたり一組で行動し、化け物は顎の上が潰れてしまっているが、物音や心のありように機微なところがある。

 どんなセンサーで感知しているかは分からない。

 でも、下手な野獣や魔獣よりも厄介な存在だった。

 魔女の気配を追って、近くにまで現れたけど。

 どうも道に迷ったようだ。


 近くにいるかも知れぬ。

 って、導師の掛け合いは“魔女かのじょ”にとってはちょっと滑稽な感じに。

 迷いの森のような大規模な魔法ではなく、簡単な()()()()位な札が門柱に張ってある。これで方向を見失っているのだから、なんとも安上がりな連中である。

「方向か」

 眼下の敵は去った。

 緊張を緩めて、不意に物思いにふける。




 ハトを飛ばした。

 1刻もしないうちに飛ばしたハトが、足の管に容れた手紙と共に戻ってきたのだ。

 帰巣本能に優れた生物が戻ってくる可能性。

 鬼道に通じるのならば、奇門遁甲。

 あるいは妖精族の、帰らずの森か迷いの森。


 いずれも、作用するのは侵入者を外に出さずに、永遠に解けることのない迷宮に閉じ込めること。

 結界でもあるけれども、守備に特化した攻撃手段であるということだ。

「もしも、ハトのそれも迷宮に囚われているのだとすると」

 不意に、雀が通りに。

 暫くは路にある虫やパンくずなどを追ってたけども。

 飛び立ち空に消えた。

 戻ってくる様子もなく、ずっとくすんだ空に目を向けてた。

「あれ?」

 んー。

 なにこれ?

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