後輩とお爺ちゃん 3
追って連絡します。
言い換えると、優先事項化を精査します。
もっと曝け出すと、こちらで判断はできないので、持ち帰ります――だ。
正教会サイドとしては、自由都市に送り込んだ斥候も帰ってきていない。
恐らくはお爺ちゃんの言っている事が正しくて、送り込んだ正教の者らは加護を何かしらの力で喪失させられ、脱出はおろか外に通信できる術もなくしたものと推測できる。そうなると、加護に頼り切った人々にはそもそも手の出しようがない。
詰んでいるんだ。
後輩と対峙するお爺ちゃん。
「当方にどうしろと?」
お爺ちゃんからの情報はすでに彼女の手にある。
正教会に入信すると、新たに“加護”が与えられ、中には加護の二重取得が可能になる例があった。
今のところ、後輩ともうひとり。
蒼炎の魔女。
彼女、今、何してるんだろう?
「セルコットとの仲介を頼みたい」
普通に会いにくればいいと思ってた時期がありました。
あたしは正教会によって存在を秘匿されている重要人物って扱いになってた。
お爺ちゃんは、正教会を通じて帝国に確認させていた。
孫娘は今、どこか?と。
ドーセット帝国は方々に使い番を飛ばして探ったけど。
魔法詠唱者協会との仕事をしたの直後から、消息不明になったのだという。
当の協会でさえ把握不明。
そりゃ、ガムストンさんとも連絡が急に疎遠になって。
ん?
「なぜ当方が」
深いため息が続く。
ゆっくりと背もたれに体を預ける。
ブロードソードは卓上に上げられて――。
あくまでも他意がないことのアピール。
「君と一緒にあるんだろ」
「だとしたら」
「今、彼女の力が必要。いや、違うな...関わらせたくはないが正解か」
邪神を奉じる連中にとってのあたしは、破壊者の象徴に見えるかもしれない。
堕天騎士の二つ名が“魔王”であるから、これが勇者サイドだとは思われにくい。
当然、アホほど強力な狂戦士エルダーク・エルフが大量生産できる。
100人もあれば、ほとんどの国が亡ぶとか、乙女神さまも言ってたっけ。
ただひとり召喚した折、契約の破棄で別れを惜しまれ号泣された。
暴れてないからか。
あたしに惚れたのか。
言葉が古代語すぎてちっとも分からなかった。
「関わらせたくない、ですか。じゃあ、何故」
「孫娘に伝えるためだ」
矛盾しているように思えて。
お爺ちゃんから諭されてたら、関わらなかったと思う。
◇
後輩ちゃんが出た部屋に残された、あたしたち。
正教会からの使者が来る。
「紅司祭さまからの指示により、“ガスパ”の渓谷都市へ」
ラグナル聖国へ戻るための馬車が用意されてるという。
お爺ちゃんと合流することなく、動けと言われてるような気がした。
「ちょ、ちょっと待って! 後輩も心配だし」
シグルドさんからも故意に遠ざけられた気がして。
耳横にジリジリと砂嵐が聞こえ始めた。




