後輩とお爺ちゃん 2
正教会が女神との会話に成功した事例は少ない。
奥の院に隠れるように住まわれている、巫女でさえ一方通行だという。
この人、普段から何してるんだろう。
ちょっと好奇心が。
後輩ちゃんは何も言わない。
ただ、ホット・ハチミツ酒をしこたま飲ませた挙句、ぽんぽんを摩って喜ばせた後で、さりげなく聞いたことがある。計算だっかも知れないがトロンと落ちた目で、彼女は「当方の知るところでは、日の半分は経典の修復と写し作業に追われ、他の半分では小学校なる学び舎に通っているとのことです」なんて口走ってた。
小学校?
響きからすると、何かとても重要な施設のような。
そのまま絡む後輩は「当方にちゅーを~!!」せがんできたので、軽くその場に捨てた記憶が。
奥の院の巫女は滅多に外に出ない。
出ても神輿に乗ってるという。
何しに出てんの?
ま、そういう訳で――乙女神さまとの対話は日に何時間も取ってないっぽい。
そりゃ、繋がるかわからないチャンネルだからなあ。
世の予言者でさえ、一方的なチャンネルでつなげられて、女神の雑談に付き合わされる。
聞き取れたものだけを、人々に伝えるんだけど。
通じ合うというのは、ちょっと違うよね。
「この都市にも正教会の孤児院などがありますが、そちらにはわざと行かなかった...と?」
後輩も闇の中に棲む者。
裏から見る、正教会がみせる表の面は、なんとも清廉潔白という厚塗り化粧に思える。
心底、反吐が出ると思ってた。
それ。
お爺ちゃんはそれを“なんとなく”で知っている。
およそ、剣客という職業による、肌感覚で知ったクチか。
「どこまでと申されたが、具体的に何か感じておられるのですか?」
――探った。
探られたから、探り返したところ。
「うむ、自由都市での有様は教会に伝えてあります。今後の対応については、追って連絡すると返答があって1週間あまり」
対応に困るのであれば、正教会もお役所仕事のように後回しにせざる得ない。
そもそも、勇者召喚は女神の都合で行われる。
これの受け入れ態勢がアナウンスされて、正教会かあるいは元セーライム法国の残滓たちが、女神の指定地に赴くのである。
“歓迎! 勇者さま”とか、なんとか。
その降臨時。
勇者とともに冒険をするパーティメンバーも選抜される。
前衛の戦士、中衛の剣士か魔法使い、後衛の聖女と修道士(女)が一度に揃う感じ。
見てて知ってるから、もっと詳しく伝えられる。
もやっとした霧の中から、
乙女神が、身でも乗り出すようにそれぞれを指さして回る。
最後に目があったのが...
あたしで。
えらくどん引かれた気がした。
あれはたぶん...
よくないもんが見えたか、或いはステータス偽装してたから。
ま、いいか。




