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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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後輩とお爺ちゃん 1

 “メガ・ラニア”公国との国境にある都市の教会は、正直、ただの教会である。

 正教会とも関係ないし、なんならラグナル聖国とも宗派が異なる、本当に祀ってる神の違うとこ。

 神像にしたって良くよく見れば、アマゾネスかなにかに見え。

 天界にあられるあの乙女神さまも「あれ、あたしじゃないもーん」てな具合に泣いておられる始末。

 いや、マジでどこの神さまなんだろう。


 あたしの中で、ちらっと浮かぶ残像。

 宴に子連れで来てた神様だった、か。



 教会の手配により、後輩が引っ張り出された。

 正教会の斥候も、彼女を頼っていたのだから、察しはつく。

「ようやく会えましたな」

 お爺ちゃんの視線が後輩じゃない方へ向けられてる。

 確かに単独で会うには少々、ものものしさに欠ける。

 てか、このあたり変に見栄を張っちゃうもんだよね、人って。

「あ、いや...こっちです」

 訂正される気まずさ。

 間違った方も、間違われた方も。



 再び、場所を移して。

 教会内の応接間へと転じた。

「――先ずは、食べるか話すか、或いは息を吐かれてから、お話になった方が宜しいのでは?」

 あたしのお爺ちゃんだけでなく、音にも聞いた剣星ホーシャム・ロムジーだから、たぶんどこかで大きな期待と誇張された虚像があった。それが目の前の見た目老人のエルフによって、脆くも砕け散らされたとこにある。

 しゃべりながら喰う、そして口から食べ物が飛んでくる。

 年齢の若い人に多くありがちな、きったない喰い方だ。


 幻滅だあって声が静かにこぼれた。


「時に、」

 匙が卓上に置かれる。

 だが、握ったバケットはそのまま。

 エルフの握力ではせいぜい、形が若干、代わる程度。

 剣星の握力だからこそ、ぎゅっと絞られて。

「正教会は何処まで把握されてるのでしょうか?!」

 余裕がお爺ちゃんにないらしい。

 老人風の喋り方じゃない。


 前から、似合ってなかったけど。

 それはそれで外見とのギャップが...。

「うーん、どっちの?」

 仄めかして問うたから、情報の切り出しに困ってる。

 まあ、これは後輩がいずれの方向にも、通じてるとも取れるし。

 或いはその裏を読み過ぎとも。

「...っ、お恥ずかしながら、この老人。神だの、邪神だのというのは、信じておりませんでした。魔獣や魔物を狩っておいてでもです」

 そういう人は結構、多い。

 加護だとかスキルなんてのが貰えても、結局のところ自分だ。

 努力をしなければ伸びるものも伸びず、自堕落に生きて行くことになるだろう。

 神さまだって、行いの正しい者を助けたいと思うだろうし。

 この世界の乙女神さまは――放置気味過ぎるきらいがある。


 もうちょっと関わってもいい気がするなあ。


 さて。

「この度の件、まさに神のご采配によるものとしか。ただ、死んだ友の分まで生きるは、長命種として当然としても。このような生き永らえさせ方は理不尽というか...解決してやらねば報われないとも、言いますか」

 バケットがねじ切られた。

 悔しさは何となく伝わる。

「神の采配ですか」

 剣星をして手も足も出なかった事実を間接的に。

 相手の強大さを伝えてきた。


 と、同時に。

 正教会とは関係ない教会を指定したのも頷けた。

 お爺ちゃんは教会を信用していない。

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