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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
277/515

どっちを優先する? 10

 あたしが6歳のとき。

 お爺ちゃんの剣が宙を舞った――あたしの堕天騎士ゲファレナー・リッターLv.65のキャップに到達した頃と丁度重なる。

 その時点で、世界最高の剣士と互角になった訳だ。

 上位の鑑定スキルであれば、オープンにしてたあたしのステータス。

 お爺ちゃんがいつになくマジな顔で...

「セルコットや、ステータスの偽装を覚えることだ」

 なんて6歳の孫娘に助言した。

 今に思えば、あたしは規格外だ。



 ベッドに腰掛け、

 足をぶらぶら揺らす、あたし。

 身内だと再度の言質を得た、大はしゃぎな彼女ら。

 そんな3人の背を見ながら感慨に。


 で、心象風景に引き籠ったあたし。


『そんな事は無いさ、あの場でのホーシャムは正しい』

 横に寄り添うように座る人の姿。

 もうただの煙のような微かな存在だけど、凄く大きくそして包容力がある。

『君が6歳だった頃はな、各地で異常ステータスの“狩り”があったんだよ。ドーセット帝国とて抗えない、強大な勢力による一方的な“狩り”だ。いや、あれは探してたのだろう...かつての乙女神がそうであったように、聖女か或いは高度な神聖系魔法の使い手を、な』

 存在が肩に軽く触れて行く。

 すっくと立ちあがって、すうっと消えていくのが分かる。

 その存在が、あたしにも懐かしく感じること、も。

「陛下!!」

 思わず口走ってた。


 リアル、3人があたしを見る。

 振り返る――涙を流してる、あたしをだ。



 かくして。

 お爺ちゃんこと、ホーシャム・ロムジーの一行が、“メガ・ラニア”公国との国境都市に入る。

 彼は都市に入るなりその足で、真っ直ぐ宗派・崇める神や教義の違いもあるかもな、教会へと踏み込んでいた。

 そして敬虔な信者のように、女神像の前で膝を屈して深く祈祷する。

 これはパフォーマンスだ。

 人、ひとりひとりを観察する事のない乙女神だが。

 この時ばかりは、無関心ではいられなかった。


 だって、お爺ちゃんが祈った“祈祷ことば”は、女神が今いちばん欲しいものだったからだ。

『神よ、勇者が人類を裏切りました』

 正確には“()()()()”裏切りました――だったかと。

 お爺ちゃんは乙女神の存在を半信半疑なとこ。

 エルフの崇める神は、かなり古いもの。

 今は後進に座を譲って、別の新しい世界へと...旅立ってしまったらしいんだけど。

 託された乙女神がそう言うのだから、たぶん間違いはない。


 さて。

 1刻ほど祈祷してたお爺ちゃんは、立ち眩みを覚えながらに長椅子へと滑るように座り込む。

 恐らくは休みなく馬を飛ばしてきたのだろう。

 従者を買って出た教会の剣士らは、だらしくもなく床でへばってる。

 時を見計らってた、神父が傍に寄り――

「何かお持ちしましょうか?」


「水か、はちみつ酒、あるいは軽食など」

 気前がいいのではない。

 教会へ入るなりに神像の前で膝を突いて祈ったのだ。

 神殿の騎士かと思ったところ。


 ホーシャム・ロムジーは告げる。

「紅の修道女殿はいずこか?!」

 と。

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