どっちを優先する? 9
「郷のみんなに避けられてた理由が少し、分かった気がするよ」
から、話を切り出してみた。
あたしは、生まれたその日から“特別”だったんだと、思う。
客観的に見て、かなり控えめな評価。
エルフ族なんて年齢だけなら、人の何十、百、千倍もの長命種。
人生の先輩ですよといった態度をする。
けども、ゼロからゼロに戻る種族に対して、それは凄く間違いだと思う事がある。
だって、短命種はその一生の中で、なんども子を産むのだから。
エルフなんて、1回くらいだわ。
難産だから特別なんて思うのは、あたしらだけだ。
逆子も珍しいから右往左往の大騒ぎ。
いや、子が出来るイベントも。
生まれるイベントも、逆子も難産も、双子とかも数千年生きる種族には未知の世界。
自分たちの中では「分からないイベント」の発生。
あ、ちな...ひとりエ〇チと、セッ〇スも興味があるのに勇気がでない、そんなトコ。
あいつらは意外と、ムッツリなんだよ。
◇
で、どこまで。
「唐突な昔語りは...えっと貴重です、が。当方の知りたいのは、先輩が本当に帝国の猛獣、帝国最強の剣士、天下無双なる魔法剣...ホーシャム・ロムジー大元帥のお孫さんなのかという事実! その一点のみ」
後輩がめちゃ、爺ちゃんを褒めてくる。
その力強いフレーズに対して、面白いようにくねりだすヒルダ。
師匠が褒め称えられるのは、弟子としての誉みたいのがあるのか。
残念だが、あたしにはない。
身内だからじゃなく、こう恥ずかしいんだわ。
その中二病丸出しの二つ名が。
あたしを前にした爺ちゃんは、もう。
3歳の子をあやす、母さまの父親って感じで。
赤ちゃん言葉を連呼する変態だった――爺ちゃんって呼んでるけど、エルフの男衆の年齢の刻みなんて、一見じゃあ分からない。
みんな美男美女だから。
母さまも漏れなく美人で、あたしはふつう。
乙女神さまからも『まな板は、そう、長命種の中では...悪いけどふつうよね? こう、まあ、可愛いと思うけど。容姿はふつう...いあ、そんな不思議そうな顔をしなくてもいいのよ? 亜人族の中ではそこそこにイケると思う分類に入ってるから、種付けの対象くらいには選ばれるから。ま、そこは問題ないと思うのよ』とか、まあ失礼極まりない反応だった。
くそう、美意識レベルがたけぇーなー。
てな訳で。
爺ちゃんが髭を生やし、外見的にも老人を装うようになったのは...
あたしのせいだ。
帝国人の中でも、まだ数名はロムジー伯爵は、人族だと思ってる者もあるかな。
「もっと師匠の二つ名を!! あるだろ」
せがむヒルダは放っておく。
面倒だし、呑んでも居ないのに絡み酒っぽい。
こんな帝国人には、水でも飲ませておけ!!
「別に隠してないけど、そうだよ」
強者には、それを演出するための間があるという。
いや、そう仕向けてるから。
てか。
他人のふんどしで、相撲を取る気はない。
あたしには、ない。
そもそも、実力が...




