どっちを優先する? 7
エルフにだって、魔力適正のよりってのがあって。
こう魔法ってのは、容器に入った水のようなもの。
善と悪に偏っていると伸び率も変わるもので。
容器の水を平行に保てる者は高みへ。
水かさは増やせるし、透明度やにごり、濃度も自在に代わる。
これは心のありようの話。
さて。
あたしの魔法は母方を継いでいた。
この世界の亜人族としては、赦し難い不良品だって話になる。
◆◇◆
百と数十年前に、あたしが生まれた。
母が言うには難産だったという。
丸っこい身体に、金色の体毛を持つ子だったとか――父方は、なんだ。銀髪交じりのハーフだったから、その...産んだ子が似てないって事で喧嘩になったらしい。ヤッたその時は、まあ、あれだ。母の処女を奪ったとかで盛り上がったっぽいけど。
そもそも、身内で婚姻し合うエルフ族の伝統からすると、だ。
母は外につがいを求めた点でも先進的だと思う。
で。
最初の父は、母の腹を疑った。
酷い話だろ。
父親の親は、金髪のエルフだったてのにさ。
あたしは父に迎え入れられなかった。
で、お爺ちゃんが来た。
母が身動き取れないんで、呼んだっぽい。
1年で、それなりに成長した。
ハーフの血が疑われたけど。
たぶん、加護のせいだと思う。
男の子みたいなボブショートの金髪、右横髪に赤色の差しのある子。
それがあたし、セルコット・シェシー。
唯一、父が遺してくれた、あたしへの贈り物。
姓だけだが。
これはこれで、いい。
さて、身の上としちゃあ。
こんなもんか?
『セル、セルコット!! ねえ、アレ...』
ん?
誰だよ、あたしを呼ぶのは。
っ。
◇
◇
◇◆◇
◇
手を引かれた先に、アホみたいな大森林が拡がってた。
ああ、これは故郷の南マダガスカル島の森だ。
いやいや。
まさか、あそこ... こんなに大きかったかなあ。
『セル! いつものアレやってよ!!!』
急かす声は、誰だあ?
ああ、なんか聞き覚えのある。
村の子供たち。
あたしよりも10年は年長なのに、背丈が小さい幼生体。
よたよた歩くあたしとは大違いなのに、人懐っこさはまるで獣のような雰囲気。
「しょうがないなあ~」
照れながら、あたしは大地に手を着いて念じる。
《出でよ、我が声に従う獣よ》
とかなんとか。
はは、中二病、これ極まれりか。
見た事も無いけど、懐かしい魔法円があられて――え、おいおい。
煙と共に、飛竜の赤ちゃんが現出する。
くぁ~って鳴く声が可愛らしい。
いあ、ちょい訂正。
当時は飛竜だと思ってたけど。
よく見ると...これ。
ドラゴンですねえ。
あたし、ドラゴン召喚してるんですけど?!
爬虫類に懐かれる、あたし。
その横ではしゃぐ純真なエルフっ子ども。
お、おい。
マジかよ...