どっちを優先する? 6
「信仰とは、奉る対象が誰であれ。当方がそれだと通じたものが、“神”になるんです。例えば、落ちてた小石を投げたとします――」
道端で見つけた小石。
手に取るまではおよそ、そこに何かあるくらいの観測までしかできていない。
だけど、投げたら何かに引き寄せられたか。
或いはたまたまの何かで跳ね返って、投げた本人に当たったら...どうだろう。
では2投目、同じように戻ってくる。
なお3投目も仕返しじゃなくていいから、足元に転がって見せる。
さてもここまでなら偶然ではない。
ここに投じた者の感情が入って、小石は“信仰”の対象になる。
まだちょっと胡散臭いなら。
小石が気になって財布に入れてみた。
「まだ続くの?」
ヒルダさんが飽きたようだ。
彼女はあたしの何かを持っている訳じゃないし、セルコットの割れ目見れてラッキー。
な態度だったんで、然程、ふたりほどの興味もないらしい。
「昔、みんなでお風呂入ったときにセルコットのおっぱい、揉んだくらいだよな」
はい。
いらんこと言わんでいいし。
後輩が歯ぎしり凄いんで、揶揄わないで。
殺気出しちゃうと、師匠がまた飛んでくるよ?
「ミロム女史の持つ、なんの毛か分らんのと」
「これは正真正銘、セルコットちゃんの縮れ毛ですよ」
ほ~ん。
「――っ、当方の聖遺物の方が至宝なのです。で、それが如何にすばらしいかを」
眩暈がする。
この3人は悪い子じゃないんだよ。
ひとりはどうかと思うけど。
彼女らはあたしのことが好きなんだ。
きっと。
でも、
◇
「お爺ちゃんは、いつ来るんだって?」
あたしから離れないから、現実に引き戻すことにした。
信仰だ、パンツだ、沁み付きだとのたまってた後輩が、険しくも凛とした表情に固まった。
どーした、変態。
「当方、気になる事があります」
「えー、あ、はい。どうぞ」
やる気がないのか、あたしも淡白な返しだった。
なにせ、この数秒前までは他人の洗濯物を“聖遺物”だと言って、両者が非常に熱かったからだが。
ミロムさんは未だ、あたしの方へ物欲しそうな顔を向けている。
えっと...
そんな顔の女性は――「あなたとの大事な絆の為に、子が欲しいの」――という流れでしたっけ。
人間様の細やかな神聖的行為でしたか。
あたし、応えられるかなあ。
「ロムジー閣下のお孫さんと言うのは、本当ですか!!」
ドストライクな質問だなー。
家族の話は学校で無理やり、ババアからレクチャーされてたよな。
なんで覚えてないんだよ。
「当方は、先輩から直接、伺いたいのです!!」
息が荒い。
怖い怖い、なになにそのヨダレ。




