どっちを優先する? 3
天界の方では、その。
あたしが“聖女”だったという再認識させられた訳で。
これと言って、いや。
自覚は無いけども、戦闘職の聖女だって気が付かされた。
まあ、他には乙女神さまとのパスも繋がり、余計面倒な事になった訳だけども。
現実世界では全くもって、何も進んではいないのだ。
◇
例えば。
最初の冒険から続く謎。
いあ、案件だな。
港町クリシュナムでの怪異。
地下闘技場の選手たちを利用して、姿かたちが変異する薬物投与事件。
これの解決は――興行主の捕縛やら。
否、決定的なとこでは完了しなかったし。
それで......
あたしたちは、王都ハイドラへ。
秘密結社と戦う人たちとも知り合う事になって。
まあ、腐れ縁が結ばれた訳だ。
ミロムさんや、ヒルダとも再会したし。
あたしの手でひっかき回して、話が拡がったり、狭まったりでより複雑に。
そして、勇者の神隠し。
こう、股間にシーツが乗ってる状態で、3人の背中越しに見ていると、だ。
つくづく自分の手に負えないとこまで、足......首を突っ込んだなあって思う。
何やってんだよ、セルコット・シェシー。
あんたは、あたしは、そんなアクティブな子じゃ無かったろが。
ああ、逃げ出したいなあ~
「で、先輩は今、この状況でどちらを優先したいと、思いますか?!」
後輩があたしに声を投げてきた。
気が付いてしみじみと3人の背を見ていた、あたしに気が付いてた?
えっと...
「起きてすぐに、ヒダを搔いてたのも知ってますよ」
見られてた!!!
え、え? ええええー!!?
「見てはいませんが、先輩なら、たぶん」
行動の把握?!
ミロムさんはヒルダさんの蔭から顔をのぞかせて、微笑んでる。
いあ、彼女がこっそり教えたのかも。
「で、どちらを優先しますか?」
「えっと」
ヒルダが天井を仰ぎ見ながら、
「今の状況を掻い摘んで話す!!」
事情が呑み込めてない。
ちょっと以上、残念な子だと思われたようだ。
いあ、3人の落ち着きようと、後輩の話しぶりからすると。
教会から何かしらの天界事情も伝えられた可能性がある。
そう、あたしが『聖女』になったこととか。
それでもなお、ポンコツだと思った彼女たちが、せっせと世話を焼いてくれる。
まったく、とんだお荷物さんだ。
「やっと自覚しましたか?」
優しそうな微笑みのミロムさんから、辛辣な言葉が。
えー、やだよー。
ミロムさんはもっと優しい子でいてよー。
「ロム爺が、ラグナルの辺境公領で保護された。供周りもなく、ただ単身、夢中で走ってきたという...爺の最後の記憶は“バリヤーナ自由都市国”。ここいらのきな臭い噂話から推測すると、大陸の中でイチ、ニを争う狂犬ぶりが彼の国だっていうしな。目の前で戦争しようって張り切って軍備整えてる、メガ・ラニア公国も無視は出来ねえ」
ふむふむ。
つまり、秘密結社が関わる公国か。
お爺ちゃんが関わってしまった自由都市か。
身体は一つ、どちらかにしか手を出しようはないと?!
「いや、そこまで単純な話じゃねえ」
「はいいいい?」




