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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
268/512

どっちを優先する? 1

 天界でのあたしを他所に。

 卓上に「まな板の鯉」となってるあたしの身体は、と。

 3人の心と、欲を満たした挙句。

 それぞれが部屋の隅で伸びてた。


 いい加減にだが。

 可哀そうだと思って、その身体に毛布なりシーツなりと布を被せてやくれ...

 ちょ、ちょい!!

「こ、後輩ちゃんまた?!」

 左手で鼻血を押さえつつ、あたしの股へ顔を埋める。

 震える舌先に湿った()が触れる。

「あ、あふっ!」


「無茶しやがって!!」

 ヒルダは床で横になって痙攣してる。

 えっと、何? スタンでも喰らったん。

「ふたりとも、体力は?」

 ミロムさんが這ってポーションを集めてきた。

 彼女も腰が立たないほどのダメージが蓄積してて。

 腕の力だけで、前に進む。

 これが匍匐前進。



 後輩はポーションの代わりにあたしに吸い付いてて。

「先輩の聖水の方が効果高いんで!」

 聞かなかったことにする。

 彼女は最初から“聖女”の当たりをあたしに、定めてた。

 あのジト目はそういう事だ。

「分かるけど、分かるけど...効果覿面過ぎて、栄養価高杉。いや、そっち通り越して私は5回噴いたよ?!」

 ――信じられる?

 なんて言葉が続く。


 ま。

 っす、要するに。

 あたしに悪戯したら、乙女神の整備したパスの()()で、腰が砕けるほどの高濃度霊障に遭遇したというのだ。一瞬、アケローン川が見えちゃったとか。

 それぞれに思うところのある、黄泉の国が見えたとか。


 ほ~ん。

 まあ、そんな事は言いから。

 あたしに毛布をプリーズ。

()()()()()さまはご在宅で?!」

 扉一枚の向こう側から、良く通る小声が聞こえてきた。

 顔いっぱいにあたしの汁を浴びてる彼女。

 返事が出来るような状況じゃないから――床で這いつくばってたミロムさんが。

「いますけど、手が離せないようで」

 扉の誰かが身構えた。

 うーん。

 3人がそれぞれに手練れだから、腰から抜き放った獲物のソレは手に取るように分かる。

 利き手に小剣、刃渡りは40センチメートルくらいで。

 左手に手斧。

 典型的な、教会の斥候部隊。

「あががが、ごが、ごびごぼぼぼ、ごべ。ぼががが...」


「何言ってんか分らんわ!!」

 転がっててスタン喰らってるヒルダが吠えてたけど。

 扉の殺気が消えた。

 いや、いなくなったんじゃなく矛を収めたようで。

「あんなんで通じるのかよ?! セルコットのおしっこ呑みながらどんなセリフだよ!!」

 台無しだ。

 およそ、かっこよくキメたであろう後輩の。

 その啖呵に、よりにもよって...おしっこでキメてるとか。

「ぐぎゃああああ、ぎゃぼごが!!」

 たぶん反論だろう。

 あたしも何言ってんか分らんけど、怒ってるのは分かる。

「で?」


「申し遅れました。この扉を挟んでのご挨拶に申し訳ありません」

 ごぼぎゃごば...あたしのおしっこも長えなあ。

 あ、えっと後輩は聖水と呼んでたか。

「ねぎらいの御言葉、痛み入ります」

 通じてるのが怖い。

 ミロムさんが上体を起こす。

「何かありましたか?」


「私は正教会の者でして。教区のハトから剣星さまがセルコット・シェシーさまをお頼りに、こちらへ合流されるとのことに御座います」

 なーんだ。

 は?!

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