いつかどこかで、交わる道 5
『賓客とまでは呼ばないけど、客として扱うのが私、この世界の女神としての役割ね』
ちょっとムリしてる気はする。
エルフだって人類だし、この世界の管理者からすれば足元を這いずり回る...
でも、その一粒に敬意を払うというのは。
その他多数のアリ一匹に愛情を注ぐという意味で。
いや、誰も彼も同じ顔した粒。
愛情を注ぐなんて難しいよ。
あたしにも無理なんだから。
『舐めんな、エルフ!』
すっごい自信だが、壁に向かって啖呵切ってますよ?
◇
乙女神さまの第一印象が、崩れ去る時が来た。
というか人懐っこく、快活なお嬢さまという雰囲気が素で、高飛車な方は演じてると告白。
なんか微妙に謝罪しているようにも聞こえ、
「あたしと対面な理由が未だのようですが?」
気怠そうな女神。
座り直して、伸ばす脚を変える。
...ちょっと待って、今、何か見えた気がする茂みの向こう...
『そうねえ、このチャンネルが一番の理由な気がするんだけど? ちゃんと理解は...している方、かな』
さあ。
さっぱり、乙女神さまの御使いの方々は――ダイレクトなチャンネルだと言ってた。
あたしが仮に手籠めにされたとしても、あたしの格は穢されることはないとも...言ってたなあ。
『ま、そういうこと』
「どういうこと?」
『(俄かに曇る表情)まな板は頭、弱い方なの?!』
ええ、自慢じゃないですが、弱いと思います!!
火属性魔法の中でも、火炎球以外が行使できないってのが、加護の問題ばかりじゃないってのを最近、知ったばかり。要するに、あたしが覚えやすかったもんだから、反復しているうちにキャパが偏ってしまった――これが原因だった。
故に、あたしは弱いのだと思う。
初歩中の初歩、生活魔法のひとつ殺虫魔法で死にかけたのも...
ま、そういうこと。
『――っ、殺虫魔法かあ。部屋の虫を殺すのに家人まで巻き込んでガス室にする...確かに発想がエルフじゃないのは理解できるわ。で、魔法操作に長けてる種族とも違うのも、理解はしたけど納得しがたい事実を私に押し付けないで!!!! あんた、勇者をサポート出来ないじゃない!!!!』
スリッパで叩かれた。
痛くは無いけど、どこからそんな小道具を。
脇を見ると、御使いの妖精さんが小道具待ちで...
◆
一方、あたしの裸体を回収したミロムさんらの会合。
同部屋には後輩と、ヒルダさんもあって三者が見つめ合う中心に、あたしの身体。
えっと、先ずはシーツか何かを被せてください。
意識が無いんで身震いすることは無いんですけど...
「ヒルダさん?」
身を捩じって、あたしの足元から覗こうとしているものがある。
呼び止められたヒルダが恐る恐る視線をあげた。
にっこにこ微笑む後輩とミロムさん。
「お、おいおい、それ怖いんだけど」
「抜け駆けはよくありません!!」
天界時間と下界時間にはとてつもなく大きな隔たりがある。
天界の方は時間が流れていない。
故に、乙女神さまは素の姿の時は、あたしよりも幼い女の子に見える。