いつかどこかで、交わる道 4
「――っ、質問しても良いですか?」
何を聞くか迷ったけど。
後輩のいや、正教会が研究している“神々の遊戯”について問う事にする。
「文明を糧にして乙女神さまに挑むゲームがあると...耳にすることがありましたが」
乙女神はわりと平然としてて。
やや呆れもしてたけど。
御使いを顎で呼ぶと、
『服でも羽織るか?』
問うてきた。
身の表層で震えてたのを気にしたかのように、
『ああそれ』
淡白な回答。
ついでに、ややシラケてるようにも感じた。
あたしの直感どおりに。
『遊戯は過去のものだよ。今はその募集そのものが出来ないことになってる...天界ローカルルールって奴だね、最近、上に上がってない連中は知らないと思うけど。ここ1万年は開催されていないよ。あ、でも...神々の怒りは、さ。...っ、休み知らずと言ってね...まあ、なんつうか。文明のひとつやふたつは滅ぶときはあるってもんかな』
勇者召喚について更に突っ込んでみた。
乙女神の視線は泳いでたけど、
『そっか、どっちかというとそっちが本命って事ね。スーリヤ爺ちゃんの愛娘っぽい信徒のお前が...、そう、そういう事ね。まな板は恵まれてるって事ね――私が行った勇者召喚は、世界に蔓延る膿を出す行為なのよ。世界には弱肉強食のピラミッドが存在する』
頷くあたし。
食物連鎖って奴だ。
今のところ、その頂点に霊長類がある。
一部、例外があるとすれば...
『世界に積極関与しない龍族と、しつこい汚れみたいな邪神族。お散歩大好きな魔獣種たち...ま、龍族は別に関与しないから、世界の端で勝手に滅びてくれていいのよ。私も彼らから好意的に思われたくないし...でもね、邪神族と魔獣は厄介。すぐに人類を食べちゃうんだもの』
乙女神の御使いは、人種族に寄せた亜人。
妖精族出身の長老がこの世界の天界に上がり、御使いという立場についたのだという。
今、彼女らの細やかなもてなしを受けて...
あれ?
待って、女神様と対面で...えっと、茣蓙の上でランチ、いや、お茶会開いてるんだけど。
『どうしたの? まな板、まさか...』
「な、なんです!!!」
『また、おしっこ行きたくなったの?!』
そんなポンコツじゃないです。
ツッコミたくなった。
いや、そこじゃない。
「トイレじゃないです、この状況」
乙女神は御使いたちに『お菓子足りないって、もっと甘いヤツお願い』とか。
あたしはいつから賓客になったんだろう。