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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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いつかどこかで、交わる道 3

 密かに女神正教会から王宮へ、

 剣星ホーシャム・ロムジーが生還すると伝えられた――皇帝の死は確実なものとされたが、すでに空の棺で国葬を済ませた後だから、皇族の中では2度目の葬儀となった訳だけども。

 国民には、その悲しい話は伝えられなかった。


 さて、帝国に伝えられたのは、勇者の背信行為のみ。

 いや、正確には勇者が謀って、皇帝を貶めた事と伝えた――あの時点では、そういう風にしか見えなかったからだが。

 教会の巫女を通じて、乙女神にも事実らしい情報が伝わった。

 まな板のあたしが次に呼ばれたのは...

 沐浴中にだが。


 えっと、湯船に浸かってるあたし、ふやけないですか?



 親切な“乙女神”の御使いから、

 湯船に沈んでたあたしを助け出すヒルダさんとミロムさんの姿が。

「たぶん、大丈夫です。ただ、まあ...こんな状態で悪戯されちゃったら...諦めちゃってください」

 え?! や、嫌だよ。

 な、何を諦めるというのか。

「貞操の危機ですかね。あ、でも...女の子同士の指で擦り合うとか、ワンチャンでセーフですし。セルコットさんの権利は剥奪されません!!」

 んー?

「例えば、師匠さんとか...人狼の方々につまみ食いとかですかね。()()しちゃっても、乙女神さまとのチャンネルは閉じませんから。安心...して、その御心にゆだねちゃってください」

 ちょっと意味深な、間があったのは。

 あたしと、

 乙女神とのチャンネル?




 そういうやり取りの中、

 あたしは再び、腕一杯にタオルを抱えて女神の前に立つ。

 後ろから見られたら、割れ目が見えるかもしれない...非常に恥ずかしい格好でだ。

『ねえ、まな板?』

 きょとんとしているあたしに。

 彼女は『ちょっとその場で回ってみる?』と命令してきた。

 女神曰く“お願いでしょ”と言うんだけど。


 それは命令ある。


 回らなければ、

『そっかあ、そういう反抗的な態度をとるわけかあ』

 なんてどっかの宗教にある巫女が発狂した。

 これは脅し。

 脅迫――女神の気分を損なえば、どこかの誰かが苦しむのである。


 あたしだけなら何されてもいい。

 状態異常無効化のチート級な加護により、乙女神は手出しが出来ない。

 でも、この脅迫は回りまわって親しい身内に巡ってくるものだから。

「あーはいはい!! わかりました、わかりました。だから巫女さまの正気を取り戻させてあげてください、お願いします」

 と、同時にその場でぐるりと、反時計回りに回って見せた。

 タオルが邪魔だなあとまでは言われなかったけど。

 喉が鳴る音は聞こえた。

『――まな板でも恥じらいは、あんのか』

 ったりまえでい!!

 滅茶苦茶恥ずかしいわ。

 御使いさんから渡されたタオルはどれも短いし、とにかくくしゃくしゃに抱えれば。

 範囲は狭いけど、乳房とデルタゾーンの上の方が隠れて、あとは影の中に。

 屈めば見えるだろうけども。


 ああ、何?!

 鼻息を感じる。

 玉座からひょいっと飛び降りた女神が、あたしの貧相な身体に興味津々。

『腐ってもエルフ、この蒙古斑は...なに、100歳未満ってとこ?!』

 応えずらいなあ。

 子ども扱いされるの?

『まあいいよ、生娘の匂いするしさ。ぺたんこでも育て甲斐があるのって、あたしは好きだからさ。うんうん、勇者の失踪事件についてお前、まな板に特別な任務を与えよう!!! この世界には今、神々の権威を侵そうとする輩が入り込んでいる。これに抵抗するべく勇者召喚を行ったのだけど...』

 目を放した隙に、彼女の手が届かないところへ連れ去られたとのこと。

 ああ、バカだよこの神さま。

『今の暴言は聞かなかったことにする』

 干し葡萄が摘ままれる。

 痛いんすけど。

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