いつかどこかで、交わる道 2
『教会? どこの?』
女神正教会をご存じない。
まあ、神さまにすれば信仰が集められれば、窓口などどこも一緒という訳だ。
それぞれの信託は、それぞれの預言者や巫女を通して窓口にすればいい。
適当につなげたチャンネルの数だけ、宗教が存在する。
ま、逆に言えば。
それらの宗教からお祈りするだけで、乙女神の神のぱうわぁ~が増すという。
ただ、聞くに一方通行っぽい。
『なんでいつもチャンネル空けなきゃいけないのよ? アブラムシの分際で、神がすべて応えると思ったら間違いなんだからね!!!』
語気は強め。
ただし、座る位置を変えながらの説法なわけで。
その辺がどうにも気になる。
おしっこ行きたいのかな?
座り込んでるあたしの乳首にダイレクトタッチ。
だから上から押すと痛いんだってば!!
『おしっこじゃない!!』
あ、そっちか。
で、でも、でも...
「痛いんですってば!!!!」
押し殺してた自分の気持ちを叫んでた。
驚いて仰け反ってるのは女神の方。
彼女くらいだと、
たぶん遊んでたっぽいが。
唐突に叫ばれて目を丸くしてた。
『なんだ、受けの体質かと思ったら。そっか、そういう反応もできるのか...まな板は』
あ、うん? どうしたの。
やや、バツが悪くなる、あたしが。
乙女神さまの表情がころっと変わったから...柔らかな雰囲気に、で。
ミロムさんみたいなあ、抱擁さを。
感じるというか、なんというか。
『こっちおいで』
呼ばれるように枕を抱えて、膝をすってにじり寄り。
じれったいのは恐ろしい相手だから。
『じゃあさ、まな板の話を...さ。聞かせてよ』
乙女神の膝元まで来ると、
寝かされた。
あれ?
これは...ベイビーな扱い?
◆
一方、逃げ延びたお爺ちゃんは。
ラグナル聖国北方総督府“ハルドワイニ”領へ転がり込んでた。
所謂、辺境伯領のこと。
軍事・行政・立法の三権すべてを特別に行使できるよう、王政府から委任された代理人扱い。
故にここは、自治政府なわけ。
さてさて。
“ハルドワイニ”領の軍事は、西に位置する“バリヤーナ自由都市国”と“北の蛮族”に向けられてる。
国境都市“ルーキー”を境にして睨み合い、それぞれの駐留騎士団で年に2度の会合を設けて、互いの意思疎通を図っている。今のところは話の通じる相手だと、互いに思い合っているから成立する外交な訳だけども。
自由都市国の国教は、乙女神じゃない。
ただし、この世界の統一神は意識下でも乙女神だと、生まれ落ちた瞬間からすり込まれている。
それでも改神する者はいるんだが。
国教レベルでは珍しい。
それがラグナル聖国に敵視される所以なのだが。
そんな国から、逃げるように境を越えた爺ちゃんは、女神教会へ。
「司祭殿は居られるか?!!!」
扉を叩くなり、そう叫んだようだ。
教会の奥から神父が出てくる。
「この教区には司教も司祭もありません。神父の私だけですが...お話を聞きましょうか?」