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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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邪神教という者たち 9

 さてさて。

 後輩ちゃんの視線が痛いので、背中を向けた訳だが。

 こう背後から刺されて、まな板まで突き破る眼力ってのは――正直、あ、あたし。彼女に何かしたんかな。こ、これ...なんかヤバいもんがあるって事だよなあ。って取り乱しかけてたとこで、女神の抱擁よろしくミロムさんに優しく包み込まれたところ。

 あ、いや。

 前からではなく、あたしの背中越しに覆い被さるように。

 ミロムさんと後輩が唸ってるのが聞こえる。

 あ、あれ。

 これは、あたしの取り合いですか。

「で、だ。――神さまの加護もない。いや、加護はあるけど、応援が届かない者同士の戦場だけども、実のところさ。これは今まで、恵まれてたんじゃねえか?」

 アイヴァーさんは嵐を起こす気か?

 ケチはつける気はないと言った。

 が、ずっと懐疑的だった。


 教会がぶっちゃけなければ。

 その疑問は外に出なかったかもしれない。

「帝国と王国の力は、過ぎたるもの。降臨した勇者に()()匹敵すると考えて良さそうだな? あ。いや、待てよ待て待て...ちょっと待て!!」

 何かを思い出したようにアイヴァーさんが皆の思考を止めさせた。

 あたしは何も考えてないけど。



 皆の前で、ひと指しゆびをあげたまま。

「天上戦争ってのは、伝説上、勇者を使った神々の娯楽だと言ったな?」

 なんかそんな話でしたね。

 この遊戯は、人々に知られてはいけない秘密の遊び。

 神々への信仰が揺らぐ恐れがある。

 そういう意味では、記録されたものが出土したのは――乙女神の失態に繋がる。

「今回の勇者召喚も要するに、その遊戯の為って事だよな?」

 ああ。

 かも...

 あ、だから失踪した勇者を、あんなに()()()探してたんか。


 いあ、待って。

 見つけちゃうと、この世界が石器時代からやり直しになるんじゃ?!

 うへー。

 生魚を柔らかいところから齧りついて、食当たりで倒れるような生活に戻りたくない。

 獲ってきた肉に齧りついて、ハリガネ蟲の親戚みたいなのに寄生されたくもない。


 あんな、生活は嫌だよー。

「どうしたセルコット?!」

 師匠があたしの名を呼んでくれた。

 いや、苦悶、苦痛、苦悩と顔芸が多彩過ぎるので、心配してくれたのだという。

 ミロムさんの腕が頸動脈を圧迫しているからでは無いんだけど。

 なんか苦しい。



 戻って、古戦場跡の遺跡の中。

 勇者たちが押し込められてるのは、カビを放置した掃除してない墓所みたいなとこ。

 目に見えないバイ菌やら、微かに聞こえる幽霊の声?

 マジで何日も居たくない場所だ。


 お爺ちゃん勇者はカビに寄生され、

 頭の上にキノコまで生やしてるけど...なんか元気そう。

「お爺ちゃん、それ? き...」

 頭の上のキノコを捩じり切る。

 痛くないのか採れたてを皆によーく見せたとこで、食った。

「「うわあああ」」

 勇者のメンタルが揺らいだ瞬間だ。

「何事もない、いたって普通の味じゃて。ワシに毒を盛ったっちゅうから、また、あのなんともい言えぬしびれ具合を期待したんじゃが...ふむ、残念じゃあ」

 残念じゃねえって声が飛ぶ。

 新入りの勇者は、乙女神のギフトを幾らか貰い損ねてる身。

 それでもこの異常なことに、それなりの順応差をみせてる。

 この成果は、異世界へ渡ったことが関係するようだ。

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