邪神教という者たち 3
さて。
あたしの方だけど。
困ったことに、長逗留することになった宿屋の個人部屋にて。
蟲と格闘中である。
この蟲がさあ、ひとの股下の柔らかいトコを噛むんだわ。
痛痒いっていうの? アレ。
で、覚えたての殺虫魔法で、あたしも死んだ。
噴霧系ガス魔法って身体によくないのね。
◇
目が覚めると――「ここは何処ですか!!!」
『煩いわねえ、わざわざまな板に相応しい御使いを選んでやったのに、こともあろうか使い番を殺そうとかする?! いや、しないわよ普通は。あのまま柔らかいところ刺されて悶絶に苦しみながら、こっちに来てもらおうと思ってたのに。まったく台無しじゃないのよ!!!!』
勝手に怒られてる。
あ、これ...糞乙女神だ。
『あれ? そんな態度でいいの』
うーんと、ごめんなさい。
こっちの態度から、考えてる事が分かる神通力は困りものだ。
じっと女神を見る。
見たら見たで、怒られるんだけど。
今回は然程、余裕のない雰囲気だった。
『この間、まな板が言ってたじゃない?』
「えっと?」
物覚えが悪いと、殴られた。
ふひ、ママンにも叩かれたことないのに。
『そういうのはいいから。収穫祭でのことよ...』
あ、ああ。
あれか。
「腰痛持ちの中年勇者の話ですか?」
まただ。
また正直に言っちまったよ。
だが、逆鱗が...あれ、ない。
『神殿の方々に問い合わせたら、本当に腰痛持ちなんかじゃないんだけど。あれの印象が何者かによって挿げ変わってることに気が付いたのよ。いつから?』
えっと。
わりと...降臨後からずっとのような気がする。
中年だから、腰に来る仕事は辛いんだよねって、直接言われたことくらいか。
だからてっきり腰痛持ちだと思ってた。
『そんな筈は無いのよ』
と、いうと?
『ギフトと加護による相乗効果により、かつての世界から持ち込まれた病気の類は、完治あるいは新品同然に書き換えられている。これが神のぱうわぁーな訳だけども、まな板がそうであると思ったのだとしたら...私が送り込んだ者は誰?』
乙女神も気になったんだ。
いや、送り込んで放置してたのを他の神に指摘されたので、実態調査に務めてたようで。
結果的にあたしに白羽の矢が立った。
神とのパスの繋がってるあたしに。
「さあ、あたしたちに分る筈もありません」
『そうよね、まな板に問うのも馬鹿らしいわね』
このセリフには“でも”ってのがあった――『仮に、勇者失踪事件。扱う事があったら、逐一報告はしてほしいの、分かってるわねまな板』――で、覚醒したトイレの中で。
確か。殺虫魔法で死んだような。
いや、なんか思い出したくない夢だったような気がする。




