邪神教という者たち 2
乙女神は世界を託された柱のひとりだ。
ってことは、あたしの神さまに仕えている、馬面御使いたちから聞いた話。
正確には担当という言葉を使ってたけど。
あたしの処理能力が弱いおつむじゃあ、言ってる意味が殆どわからなかった。
ただし、今。
乙女神の素性よりも、それが遣わしたという勇者たちが大問題だ。
こいつらは異世界人。
しかも、性能はカタログ以上の化け物たちで。
加護を失っても、その強度は常人の幾枚も上と言うのだから...。
◇
ドーセット帝国の討伐隊を殲滅した者たちは、旧い遺跡に潜った。
ここは“かつての戦場”である。
遺構はその後に建てられたものだという。
その場に、
勇者を騙った男と対峙する者がある。
第一大陸で捕えた少年勇者。
ハイソックスとショートパンツの似合う、中性的な少年の...。
「これで全部かな」
乙女神が遣わした勇者たち。
見渡すと、壮観。
圧倒されるとでも言うべきか。
まんま圧が強すぎて、常人なら吐いてもいいレベル。
「いやあ、そんなに睨まない。睨まない...おじさん、困っちゃうなあ」
重度の猫背、精悍さの欠片もない男がそこにある。
ただ、睨む勇者たちには枷が。
「この、これは何だ!!」
少年が噛みつく。
ステータスに余裕があるのか、蹲って小さく震える様子はなく。
大人相手でも威勢よく噛みつくよう。
「それは、枷だね」
まんま。
「分かってる!! 似た物はボクの世界にもあったから!!!!」
そこじゃない。
ステータスに浮かぶ『加護の喪失』が気になる。
枷によって発生しているのか。
土地によるものか。
いや、この地に招かれた時には無かった警告文。
なら...
「ああ、いあ。それは枷でもない、全く別の作用によるもので...君たちから加護を奪ったところで意味は無くもなかったあ、くらいか。本当に大した意味じゃあ無かったのが、癪に来る!!!」
急変する態度。
これは彼の憎悪であろう。
「入念な計画だった筈なのに」
企図したとおりに運ぶことの方が稀だ。
全体が大きく狂わないよう、小さいところで下方修正するのはまあ、常識の範囲。
勿論、きっちり枠にはまった計画よりも。
少し甘いところを残してた方が、修正の舵は取り易いものだけど...
これは、
「いやあ、済まないけど」
新入りの勇者枠が語り掛ける。
中年勇者だが、ちょっと気分が悪そうな雰囲気で。
「申し訳ないけど、聖女さまは」
「ああ、あの娘か。帝国の三の王女だっけか? 利用価値もなくなったから、活動資金になって貰ったよ。勇者の手垢付とは言え、元王女...その辺の趣向が好きな連中には垂涎の極上品だったようだが」
中年勇者から怨みがにじみ出てる。
周囲からは「どうどう、落ち着け新入り」なんて言葉が掛けられる。
彼らの聖女は死亡してた。