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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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春は戦いの季節 4

「加護が使えなとは?」

 人参のサラダは、輪切りとスティックがある。

 添えたソースは未だない。

 なんせ、肉は調理場で焼いただけ、ローストしただけ、湯銭しただけのもので。

 釜茹での塩が卓上にある。

 豪快をも吹き飛ばして、野蛮ワイルドの一言に尽きる。

「ふふふ」


「なんだ?」

 皇帝は目の前の人参を水に浮かべてる。

 即席の塩水だが、濃さは舐めて『しょっぱ』って言えるとこ。

 ひと呑みしたら絶対に噎せ返るだろう。

「いや、知恵だなと」

 爺ちゃんはソレを知恵と表現した。

 塩水に漬けた根野菜はほんのり甘味が増す。


 帝国の料理は、まあ。

 もう少し文明的だ――付け合わせのソースくらいは...用意してくれるのだから。

 食事に豊かさや彩を求めてるところは平和だ。

 平和ではない国は、生きることも()()()()になる。

 余裕が無いのだ。


 あとは。

 まあ、文明が単純に追いつけてない...とか。

 この国はどっちなんだろう。



 魔法が使えない、はちょっと乱暴すぎた。

 世界の主神たる“()()()”の加護の効いた魔法だけが使えない。

 つまりは、正教会が用いる祝祷魔法あたりを筆頭とした、現代魔法全般が対象となっている。


 で、そこんとこ行くと。

 信者数は()()()()では少ない、あたしのスーリヤさまは別格。

 っても、火属性魔法しか扱えないから。

 相克する対象が出てきたら、てんで使い物にならなくなる不安定さ。

 まったく使えないよりかは。

「なるほど...そういう絡繰りか」

 即座に理解する皇帝。

 乙女神の力が及ばない地を用意する。

 加護によって勇者たちは、常人の遥か数十倍もの武力を得ているのだから。

 この祝福を断ち切る事で。

「無力化したわけか」

 食事の中に毒物はない。

 混入させる意味もない。

 そもそも無力化に成功しているのだから...


 じっと市長を睨む皇帝。

 ふと、視線を感じた――それはすぐ真横から来るもの。

 ゆっくりと、右へ頭を向け直す。

 中年勇者の視線がわりと熱いように思え、

 左わきばらに滲む熱を感じた。

 こう暑苦しいヤツの手が肌にまとわりつくような...

 ひどく気分の悪いものが這う感じで。

「陛下!!」

 立ち上がる爺ちゃんにも刺客が、両脇から。

 するりと躱して、ふたりの従者を自衛用の肉切りナイフで切りつける。

 ごばっと血の噴水が天井にまで挙がった。



 皇帝はわき腹を刺した男の腕と、額をそれぞれの手でがっちりとホールドした。

 常にその身を戦場に置いていた男の剛力のさま。

 刺客の男の腕は掴まれた部位を粉々に壊され。

 額はめり込む指が見えなくなるまで握りつぶされたところ。

「ば、化け物が!!」

 これは上座の市長の声。

 三の王女は茫然としてて、覇気がなく。

 精気もないし、そもそも意識もあるか定かじゃない。


 で。

 女神正教の神父らもことごとく打ち取られてるありさま。

 あ、いや。

 警戒してた帝国兵もおよそ似た状況に。

 加護が無くなると、人は脆いということか...

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