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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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春は戦いの季節 3

 エグマン市長に()()()()()勇者一行は、遭遇でのもやもやを解消しないまま、街の中心街へと歩む。市長の胡散臭さも解消していないし、問題の解決どころかそもそも論、何もはじまっても居ないのだ。

 ただ一方的に、視線を感じるだけ。

 前情報でも明らかにはされてなくて。


 ただ結果だけがある。

 ()()()()()()()()()()()――と。



 街に入る条件として。

「武装解除は...まあ、当然でしょうな」

 帝国でも、他国の軍隊が逗留するなら“条件”として提示するだろう。

 あくまでも治安上、双方において最低限のすり合わせは行う。


 軍隊からすべての武器を没収するのは難しい。

 だったら入城を拒否して『悪いけど野宿してね』が正しい判断だ。

 この処置に駄々を捏ねる国は存在しない。


 いや、する筈もない。

 侵略者じゃないなら、猶更に。

 旅団の目的が“旅”であるならばだ。

「だが、有無を言わさずに剣と槍、盾が奪われた...身に着けた鎧こそ没収されなかったが。これも脱げば即座に没収されかねぬ」

 爺ちゃん的には『そんな被害妄想な』って、親友である皇帝の言葉を流してた。

 やや、過剰。

 そんな言葉でまとめてた、かも。


 その時までは。



 皇帝の目は勇者に注がれる。

 注意を払うのではなく、彼に注目していると言った方が正確で。

 爺ちゃんも、親友の行動に疑問を持ってた。

「何を見ている?」

 爺ちゃんに諭されて、

「うむ、今しがた勇者のナイフが没収された。護身用だと言うのに、あっさり手放し当たりの不用心さに聊か怒りが湧いてくる...と、思うてな。勇者である自覚が足りぬ!!!」

 護身用のナイフは、目の前の卓上にある肉を削ぐのにも使う。

 使ってるところ見せないのがプロなのだが。

 剣術の訓練でも、勇者が“()()()”あったことなどは無い。

 記憶に残っているとすれば、どうサボるかの方に思われる。


 で、3分後の姿だ。


 解せないことなど、勇者かれにまつわれば、いくらでもある。

 そう、いくらでもだ。

「我らは剣を失っても、技は奪われはしまい」

 少し宙を見る爺ちゃん。

 思うところがある。

「なんだ?」


「いあ、な...その技も...おそらく封じられてると見る。桟橋に足先をつけた瞬間から、精霊の声が聞こえなくなった...マナも感じられぬ。これは乙女神の()()()()()とみている」

 思わず声を挙げそうになった。

 皇帝は己の口の中に木の根のようなサラダを放り込む。

 口の中の水分が吸われるようだ。

 実に、味気ない。

「なんだ、この...噛み応えのある、むむむ...甘みも?!」


「ああ、それは人参だな。“大傘歩行茸カリモアルクダケ”が傘に載せてた事で発見された、根野菜というものだ。今のところ、どこも改良中だから滅多に食える代物じゃあない!! 陛下おまえさんはもしや? 固くて不味そうに見えた()()、庶民の食べ物でも出したんじゃあねえかと思ったクチかい」

 ちょっと揶揄いつでに嗤ってみた。

 人参は未だちょっと野性味がある――あれは苦い。

 甘味があるのは根に栄養が蓄えられているか、採ったものを冷たい場所で寝かしてたか、だ。

 この国では雪の下に、栽培した“野菜”を寝かしつける技法がある。

 コストが高いので、裕福な者たちしか口に出来ないんだけど。


 一応、もてなされてた訳だ。

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