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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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春は戦いの季節 2

 王宮の烏番は、アイヴァーさんやシグルドさんらと同じ組織のものたち。

 ドーセット帝国にも入り込んで、皇帝と現執政の皇太子に仕える兵士である――経緯は不明だけども、結社の暗殺者から皇太子を救ったことが、抱えられる転機となったとか。まあ、アイヴァーさん曰く『陰ながらに見守るという、スタンスだったんだけどね』とか。

 表に出たのは、その場のノリだった模様。

 てか、惚れちゃったようなのだ。

 烏番は...。

「あ、うん。メス...年頃のね。外に出たのも、任務も初めてで」

 補足すれば、彼女のひとめぼれとか。

 春らしい話題だよ。

 仕えて2年目らしいね。



 烏番からの報告――『島大陸に“結社”の影あり』。

 各大陸でも活動報告が散見し、ドーセット以外でも利害が一致すれば。

 シグルドさんたちの組織は自身らの“信条”に即して、彼らと()()()()を組んでいるという。

 そうした協力国からの最新情報なのが。

 あの乙女神が送り込んだという、勇者の失踪なのだとか。


 あの()、何やってんるんだろう。

 自分の可愛い子が...ふぅ。どっと疲れる...。


「ようこそ、バリヤーナのエグマンへ」

 この街の名のようだ。

 で、手揉みしながら声を掛けたのは、市長――船着き場の役人がぽつりと零した言葉に、帝国兵が気が付いたからなんだけど、どうにも胡散臭い登場だ。

 市長は肩を竦めて、

「申し遅れました、旅の方々。私、商人あがりのエグマン市長です」

 爺ちゃんは胸中で、“冒険者あがり”の間違いだろって毒吐いてた。

 恐らくは暫くの間は商人だったのだろう。

 見た目でならそう見える所作がある。


 でも。

 その足運びに、視線は嘘はつかない。

 邂逅一番で兵士の数と質を値踏みした。

 当世、流行りの“鑑定スキル”とでも言うのだろうか――まずまず自然の流れを装いながら、俯瞰した視点から相手を値踏みする技術は一朝一夕では身に付かない。死線を潜り抜けた者の独特な臭いもある。

「あれ、あれれれ...みなさん怖いですよ」

 市長の方が怖い。

 船着き場という不安定な場で、衛兵と対峙させられると洒落にならないし。

 死人も出るかも。

 そんな追い詰め方だ。


 市長の立ち位置は、街と街の入り口の境目に。

 彼が首を横に振れば戦争になる、そんな雰囲気なんだけど。

「私だけが喋ってませんか? えっと、あなたがたは...」

 軍旗が風でたなびいている。

 時々、その国章がはっきりと見える時だってある。

 港を構える街の市長であれば。

 いあ、

 そもそも自身を“商人”だと偽るのであれば知らぬはずもない。

「ドーセット帝国の者だ!!」

 旗持ちの兵が、軍旗を仰ぎながら応えている。

 頬を緩ませる市長とは対照的な、帝国兵。

 勇者の姿も、視線は捕らえているだろう。



 さて、この先はどう出るのか。

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