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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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勇者と遠征軍 8

 起床後に気が付くのも鈍感だと思うけども。

 ベッドに大きな地図を設けて、そこに群がる()()()にも戦慄した。

 その小動物はただの小動物ではない。

 それぞれ“神の使い”と呼ばれてる動物たちなのだ。


 そういえば、男神のみなさん。

 あたしの背から圧を掛けて『聖水』とか叫んでたような。

 聖水なんて大層なもんじゃなく、これ...

 おしっこなんだけど。

 啜りに来たん?

「あーいやいや」

 両手で顔を覆い、ゴロゴロ悶々としてたんだけど。

 ふと、視線を感じた。

 ベッド脇から後輩が覗いてくる。

「何が...“いやいや”、なのですか!! ベッドをこんなにして。シーツ下にある藁布団は、天日干しすれば1シーズン持つ身。しかし、先輩が()()()にしちゃったら、天日だけじゃ不衛生だってバレたら、教会側が弁償になるんですけどね...分かってますか」

 教会の推薦で安く泊まれた宿。

 しかも皆、個室が宛がわれて。

 かつ、白いふかふかのシーツありベッドは格別だった。


 そんな優しい宿屋に、あたしは迷惑をかけた。

 うーん、絶対にマズイよなあ。

「じゃ、濡れたパンツを履き替えて...」

 あたしのパンツに手を掛ける後輩。

 待ってください、引っ張らないで。

「えっと、ひとりで出来るんだけど?」

 抵抗するあたし。

 抵抗しないわけがない。

 伸びる、伸びる...

「パンツの履き替えはお任せを!! 上衣はご自分で」

 ん?

 そこは逆。

 じゃなかった、あたしが全部やりますから。



 後輩を部屋から追い出した。

 宿屋の給仕の方に『ごめんなさい』をした。

 お姉さんはコロコロと微笑みながら、

「いいんですよ、お漏らしなんて日常茶飯事ですよ? 吐しゃ物なんかもありますし、失恋で枕を濡らす人もいますから。その時々にベッドくらいでも“柔らかく”しているんですよ」

 深い。

 誰かの胸の中で寝たいとか。

 温もりを必要とすることがある。

 そんな時にベッドが寄り添ってくれると――なんて優しい宿屋なんだ。

「あ、でも弁償はお願いしますね」

 現実も追いついた。

 あ、うん。



 そうだよね。

 そうだよ、なあ...。

 金貨1枚で?

「それは多いですよ。銀貨5枚で」



 さてさて、勇者ご一行はどうなったのかと言うと。

 カプルの街を発って2日目。

 船は2本マストの三角帆の組み合わせ。

 この辺りの海域では、ごく普通の帆組なんだけども。

 船頭は順風を何度も逃がしてた。


 な、訳で――いっこうに前に進む気配がない。

 いや、船足が遅いだけで鈍亀のようにノシノシってな具合で、前には進んでる。

「流石に2度も3度もとなると怪しさが増す」

 お爺ちゃんが剣の柄に利き手を置いた。

 抜かないけど、剣士が刀を手にする意味ぐらいは誰の目にも明らかだろう。

 下手を打てばその首が飛ぶ。

「いいんですかい?」

 船頭はしゃくれた顎を突き出して、

「この首を落としたら、誰が動かすんで」

 足元を見た。

 皇帝たちが乗る船以外も、足並みを揃えているようで。

 呼応するように半旗の模様。

「ふむ掲揚で探ってたか」

 ヒルダの父の落ち着き具合はどこから。

 今、ここで正に反乱が起きようとしているんだけど。

「よい! 先ずは如何ほど欲しい?!」

 王様は話が分かるねえって船頭の下卑た笑いが響く。

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