表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
236/523

勇者と遠征軍 5

 湯あみという名の沐浴を済ませた、あたし。

 バスローブでもない薄い衣に、股引みたいなズボンで厨房に立つ。

「貧相だなあ?」

 エルフの女子に失礼な言葉。

 そりゃ、まな板と差支えの無い胸は、師匠曰く「前後の区別なし、しいて言えば未開発な干し葡萄に期待か?!」なんて言いやがってくれましたわ。干して黒くなった葡萄と一緒にするなって、未だ、やや赤みのある野苺じゃろがいと。

「服の前開きが無かったら、背中と大差ないな」

 料理長が嗤った。

 反論する気も失せる。


 またも、奥から甲高い笑い声が。

 いやあ、すごい響くなあ。

「あれが、この世界の第一柱の神だよ」

 バジの奴が膳を押し付ける。

 ついさっき、公務に一区切りをつけた“乙女神”が舞い降りたのだという。

 ほう。



 宴会場の方は、席のない大広間。

 好きな膳から食事を摘まむような...バイキングスタイル。

 乙女神の神々しさに、他の神々が霞んで見えるほど。

 なんの違い?

「そりゃ熱心な信仰心だろ」

 あたしたちの世界の神。

 乙女神の伝説は多岐にわたる。

 第一大陸では『竜を御する乙女神』であると。

 第二、三大陸は『天界軍を率いし戦乙女神』とか。

 第四大陸では『魔神を屈服させた乙女神』なんてのもあって。

 第五、六、七大陸のは『世界を創造した唯一なる乙女神』が有名だ。

 そのどれもがただ、ひとりの神を指しているのだから驚きだ。


 女神正教会は、そのすべての乙女神を奉じる。

 くぅ~...必要に迫られたら、また、新たな乙女神を生み出しそうだ。

「あ、そこのまな板」

 呼び止められた気が。

 ぎこちなく振り返る、あたし。

「あんたしかいないじゃないのよ」

 振り返っても、しばらくキョロキョロしてて。

 じれったい奴だと認識が変化した。

「わたしの勇者、元気してる?」

 しばらく沈黙が続き。

「ちょっと待って、まさか知らないんじゃ」

 知り合いの御使いたちがすっとんできて。

 代わりに謝ってくれる。

 でも、いまいち意味が分からず...

「腰痛持ちの中年勇者ですか?」

 あたしも、どうかしてたと思う。

 なんで、あんな素直に返答したのか。

「中年?」

 逆鱗じゃないけど。

 乙女神の声が震えてた。

「ちゅ、中年じゃないわよ!! もっとよく見なさいよ...少し顎と首の境はないけど、四角い顔で精悍で、意志の強さと性欲に満ち溢れた太い眉毛に......漢の力強さを感じない訳?! マジ、マジで言ってるのこのまな板は!!!!」

 あー、はいはい。

 あれのセンスは乙女神のもんか。


 ま、このまな板は...は余計です。

 喧嘩を買わない、あたしも成長したなあ。

「しかも腰痛持ちですって?!」

 まだ続くのか。



 乙女神は顔立ちのいい勇者を、複数送り込んだ。

 それぞれにギフトと呼ばれる能力を託し、自分が管理する...あたしたちの世界へ旅立たせた。

 けれども。

 中年勇者のみ残して、行方不明という。

 もはや謀略の匂いしかない。

「乙女神に絡むなよ、まな板」

 とうとう、名ではなく特徴でよばれるようになった。

 この作務衣を脱ぎたいです。

「露出したいと?」


「ちがーう!!!」

 この夢、早く冷めないかなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ