勇者と遠征軍 4
夢心地のあたしの中で――。
神さまたちの集会が始まる。
なんで、こんなとこに集まるのか...
「チャンネルを繋げたからね」
馬面の御使いが珍しい顔を見せに来た。
なんか持ってる気がする。
盆?
「...人手足りないんだよ、お前も手伝え」
と、御使いに手を引かれて厨房へ。
えっとここは...
「ああ。夢の中だけど、厳密にはお前のじゃない! 天界に繋いで人手として利用しようって。バトウとかバジの奴らの考え。お前を贔屓目でみてる連中だよ」
はい?
「本日の集まりは年に一度の“天界祭”で。あ...えっと、人の世でいえば春と夏と秋口にやる、収穫祭みたいな集まりでな。まあとにかくも、御使いたちだけじゃ手が足りないから。チャンネルの開けやすい緩い連中を引き込んで、給仕させるのが目的なんだ」
つまり、あたしはその締まりが悪い方だという。
漏れのレベルは最高値の10。
普通の人は3か4で、なかなか繋がらない。
聖職者で信奉レベルが高くても5か6ってんだから、最高値の10ってのは預言者レベルらしい。
天界のお漏らしを受信しまくって、頭がぽ~ってなるタイプ。
紙一重に預言者がいて。
成れなかったら、妄想癖とか妄言癖とか、狂信者になるんだとか。
いわゆる、危ないヤツのラベル付きだ。
「ひ、ひどい」
「酷かないだろ。こんだけ感度が高ければ、処女受胎もありうるレベルだぜ?」
よく言えば。
触れられた娘は漏れなく孕むとかいうレベルじゃん。
鬼畜だー!!
鬼畜だー!!
「いやいや、神さまだって人は選ぶさ。給仕で呼ぶんだ、何かしらの褒美で孕ませる...娘たちは神の子を産んで“聖女”になるんだから、この世界じゃ金の卵を産んだガチョウよりもいい暮らしが待ってるだろ?」
やっぱり、こいつらは人の世界を分かってない。
厨房の奥から、いつもの御使いがやってくる。
これまた途方もなくイラついてるようで――「こんなトコに居やがった。こっちにセルコットを呼んだら、先ずは湯あみで身体の汚れと肉の匂いを落とすんだ!!! 乙女神さまが此奴を見たら、串に刺そうとするぞ!」
は?
串刺し???
「肉臭いか」
あたしの手を引く御使いが...くんくん。
おっと、何しでかすんです?
「いうほど臭いか? 俺としてはこれくらいの蛮臭は普通だと」
馬の鼻が上下に動く。
まるでそれが目にもみえるほど大きくなったり、小さくなったり。
「雑草しか食わないエルフのソレから考えると、こいつは肉を喰らう。四つ足で歩くタイプは苦手のようだが、二足歩行ならば平気で...」
二足、いあ、それトリだよ。
人じゃないよ、人なんか食べないよ。
「いや、食ってる食ってる」
吸ってるとかも言われた。
更に仲のいい、バトウが口をはさむ。
多くの馬面たちが厨房で働いてた。
「吸わないって!!」
「お前の後輩はどうだ、花弁に蛇苺までつまみ放題だろ!!」
はあ。
確かに...
納得しちゃだめだ。
ぐうの音も。
「だ、そんなことはどうでもいい」
あたしの話題が切り捨てられた。
天界の収穫祭には、世界の“神々”が集う。
世界ってのは、神さまひとりにつき1個の空間めいたもの。
そこにも、人がいるんだという。
でなきゃ、神さまは力を失って消えるんだという。
実際に数百の神が消滅した。
ちなみに信者はひとりでもOKなんだと。
「わたしの勇者はどう?」
宴会場の奥からひと際、甲高い声が聞こえてくる。
えっと声音だと高飛車?
ギャルっぽくて、艶がない。
笑い方が下卑てるというか。