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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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勇者の覇業 14

 水辺だから、周囲との温度差はわりとある。

 春が近いとは言え、まだまだ冬の香りが残ってた。

 リーズ王国の水源地である“ブラック・レイク”も例外ではなく、ところどころに冬の獣たちが爪痕を残してるわけで、そうだなあ...体感で約5度いやいや、7、8度はぐっと腹の底から冷えるような気がした。

 かくいう、あたしも鎧の下に腹巻の2枚重ねと、ももひきの多重装甲で武装してる。

 不老不死とか思われてる、エルフだって腰から風邪をひく。

 下痢が始まったら、そりゃあもう、酷いものだ。


 恐らくは見せられたものじゃないだろう。

 いや、見たい?

 ただ、単にトイレと自室を往復するだけの、きったねえ話にしか。

 えっと? マジで? 変態さんですか?



 ふらりと、爺ちゃんがあたしの傍に来る。

「誰と何をコソコソ会話しとったんじゃ?」

 あたしが見てた森の奥へ視線を向ける。

 まあ、何もない。

 あたしも我に返ると――

「え?!」

 なんて霧でも晴れたような声が出てた。

 何かに憑依されてたような雰囲気。


 この実況は無自覚なの。

 気にしないで。

「そろそろ出るぞい!」

 その言葉が意味するところは、急激な気温の低下だ。

 3000発以上の樽を水中で爆発させた。


 それこそ正に、蛇が出るか蛇がでるか。


 リーズ王国側は、別の意味で大混乱だ。

 七色に警戒色を発するスライムたちの群れ――普段は、大人しく治癒魔法くらいしか使わない、小さな魔物たち。契約が成功すると、戦場で宿主を護る頼もしき相棒となるというスライムとか。

 種族名は“スライム・ヒーラー”って職業名も兼ねてるという。

 契約者が代替わりしても、忠義を尽くして守るという。

 平均寿命は2代半っていうから、結構な相棒感がある。


 そんな彼らの住処も、今の樽で吹き飛ばしたわけで。

「先生があっちで怒ってるよ?!」

 爺ちゃんにそれとなく、先生の背を指さした。

 スライムを説得しに王の陣屋に駆け戻る先生たち。

 兄弟子も何人か...



 大人げない爺ちゃん。

 前髪をかき上げながら、

「陸に揚げたいという要望だったからな」

 もう。

 しっかし...ぞくぞくすると、する。


 鎧の中にまで纏わりつくような。

 寒気がある。

「ふん!」

 あたしは爺ちゃんの胸に顔を埋めてた。

 いや、森側へ2、3歩後方へ飛んだ感じで――湖の主が水面から這い出てきたとこだった。



 盃をあおったところで、

 語り部のヒルダさんが咽かえってた。

 鼻の奥にチーズの欠片が飛び込んで、むちゃくちゃ痛そうだ。

「が、ああああ、ご、ごめん...いた、痛い!!!」

 ちーんしなさい。

「「「ちーん、しなさい!!」」」

 あたしの心の声を、皆がヒルダさんに伝え。

 彼女の背を師匠が叩いてる。

「ぐへ、ぐへ、ぐへ~ それ、兄さまのソレが、痛い!!!」

 そりゃ痛かろう。

 グーで殴りすぎ。

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