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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
222/513

勇者の覇業 11


 ぎゃああああああ~!!!


 “ブラック・レイク”の近くで再び駐留地を得た勇者一行。

 野ざらしな野営地ではなく、湖の恵みを糧とする小さな部族の集落に逗留したような形だ。

 そんな陣屋から、異常ともおぼしき悲鳴。

 いや、あれは重低音を利かせた叫びか、なにかだった。



 状況が状況だ。

 水源地であり、湖底に“みずち”が棲まうと言う()()()付の湖があるんだから。当然、それ絡みの由々しき事態だと思った者は少なくは無かったはずで――着の身着のままで、真っ先に飛び込んできたのは皇帝陛下その人だった。

 奔る足の速さは尋常。

「如何した!!」

 飛び込んだ天幕は、勇者のもの。

 もっと周りを見るべきだった。

 悔やむものではなく、気を配るべきもの。


 愛刀片手。

 抜刀して飛び込んで立往生。

「お、お前は! 何を...しとんじゃあ?!」

 これは聖女こと、自身の娘であるマッパの三の王女へ向けた言葉だ。

 吟遊詩人はこのくだりに、苦し紛れの“嘘”を織り交ぜた。


 えっと。

 三の王女の寝所に現れた、魔の者を退けたというエピソードの追加。

 で、しかも語る側の方でも大きく違ってくる。


 ドーセット帝国サイドだと。

 王女の名誉のために、魔物に襲われそうになった話。


 リーズ王国サイドだと。

 皇族の名誉のために、村が襲われてたので剣星せんせいと弟子たちが、()()()に勇者を助けたことになっている。腰が滑って〇痙攣も起きていたとか、そんな話は一切、書かれないし語ってもいない。

 ただ、その目撃者がこともあろうか、皇帝陛下だったのだ。

「えっと...抜けなく」

 知るか!!って片づけられないのが父親。

 自分と大差のない脂ぎった、悪く言えばオークみたいな中年おっさんにだ。

 手塩にかけた愛娘が、婚姻もしていないのに食われてるのを見せつけられている。

 頭を抱えてたら、

「お義父さん」

 なんてフレーズが聞こえた。

「あ゛」


「こ、これ...腰に」

 皇帝に殺意が湧いた瞬間。

 魔が差すというのはあるのだと知った。

「ちょ、へ、陛下!!!」

 止めたのはお爺ちゃんだった。

「放せロムジー!! 余の願いはただ一つ!!!! 今ここで狼藉者を誅滅することのみ」

 勇者の方はいまいちピンと来ていない。

 誅滅?とか口に出して、ベッドから滑り落ちたままだ。

 動かなければ、腰はこれ以上窮屈な体勢にならないらしい。

 しかも、3分経てば“腰痛緩和”スキルが発動する。


 ただし。

「今の悲鳴は村中に轟きました!」

 これで目が覚めた。

 三の王女の方は、抜けないのだから隠しようがない。

 例えば、勇者が平然と胡坐をかいても、彼女とは向かい合ってハグしているし。

 仰向けに寝れば、王女は彼の上に載っているのだ。

「い、いかんではないー!!」


「そうです。王女さまの名誉が汚されます」

 こんなオーク男に。

 いやあ、お爺ちゃんも言うよねえ。

 前から思っても居なければ、そうそう口には出ないよね。

「くそ、くそくそー!!!」

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