表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
221/539

勇者の覇業 10

 あいててて。

 ひぃー

 おでこ、ヒリヒリするぅー


 あ、ただいま。

 みんなでムダ毛処理中。

 あたしは眉の間と、おでこに産毛が多いらしく。

 細く短いから放置してたんだけど。


 ヒルダさん曰く。

「私たちはもっとオシャレをしなくちゃいけない!!」

 猪戦士な彼女から、恐らく一生、口にしないであろう言葉が飛び出した。

 きっかけは、外で身体を拭いてた彼女いもうとの傍で、兄である師匠が余計なことを言ったのだ。

『お前、腕の毛が凄いのな?!』と。


 ただし。

 これにはちょっと違う意味が。

『お前、腕の怪我、凄い深いんだな大事ないか?』だったというんだけど。

 兄上のバカああああで、すっ飛んで行ったらしい。

 釈明の場も与えられないのはちょっと可哀そうだ。


 そこでムダ毛処理が行われる。

 まさかこんな痛い目を見るとは、おしゃれとは何なんだ!!!



 馬車の中で蹲る女性陣のひと固まりがある。

 吟遊詩人と化してるヒルダは、腕と脛が血だらけになってるんだけど。

「さて“竜殺し”の勇者はどうなったんだ?!」

 馭者のアイヴァーさんが話を振った。

 一番、酷いのが後輩だった。

 口の周りがヒリヒリすると涙目である。

「ちょ、ちょっと待ってね」

 いや、マジで馭者なんだから前を見て!!!

 T字路で、すれ違った商業馬車が今、視界から消えたんですけどね。

 T字の奥は窪地になったらしく、可哀そうに商業馬車は道なき道へと滑り落ちたのだという。


 T字路を右に曲がって後。

 あたしは消えた馬車の事態を知ったんだが。

 これ、下手に声を掛けたら...

「怒られるから、知らんぷりだ」

 師匠の口調が柔らかい。

 もしや、爺ちゃんのことで...

「ロム爺のだけじゃねえ!! 今、ここで名乗り出て、面倒事に首でも突っ込んでみろ!!!! 間違いなく財布から金貨が無くなるだろ。ここはだな、相手が怒ってこっちに走って来ても、知らんふりするのが大人の対応って奴なんだよ」

 うーん。

 大人ってのは卑屈なの?

「こ、こら!! 変な正義感なんか持つなって話だ!」

 ヒルダさんの視線は少し違う気がする。

 まあ、兄妹揃ってアウトローな生き方ではあるんだけど。

 帝国の暗殺者ってのは、国の正義と自身の正義に絶対の自信をもって活動している。



 そうじゃないと。

 ブレたら仕事に手が付かなくなるんだよね。

「じゃ、勇者の話に戻そう――」



 リーズ王国の最深部。

 水源地“ブラック・レイク”。

 水底に“蛇”が棲むというのは建国期よりも昔から、湖の周りにあった部族たちの言い伝えが起源だ。で、もうひとつ...この湖には“ブラックハウンド”っていう、地獄の番犬でも彷彿とさせる物語も多数、残ってた。

 どちらかが一つで語られるのではなく。

 どちらも同じように言い伝えられてきたようで。

 この近くで旧い古代種の族長からは――『数えてはいないけども、数十か数百年に一度。“生贄”をこの地の“神”に差し出さなければ成らないのだ』と口伝されてきた、と。


「近年では、時代も変わって“()()()()”という、行事に代わって人身御供ではない方法で鎮められてきたが、こちらの知る限りでは“ブラックハウンド”の方は風習的に忘れられたようなトコがある」

 先生が、周辺を歩いて調査したこと。

 国王や教会勢力は、このあたりの口伝を迷信だと、退けてしまったんだけど。

「口伝なあ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ