表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
217/511

勇者の覇業 6

 皇帝がざっと見渡し、

「ふーむ」

 リーズ王国を挑発しそうになったとこで、手押し車の上にある勇者が。

「立派な陣屋ですね? 逗留して数日といった当たりでしょうか」

 被せる技を身に着けてた。

 三の王女の気配りも入ってる。

 皇帝が話し出すと、喧嘩売ってるように見えるからだが。

「いえ、こちらが用意できた兵は千人程度。我が国の事ながらにお恥ずかしい限りです」

 へりくだる剣星。

 リーズ国王軍は、まあ。

 この時は別の場所に待機してただけで、この場には千人だけの陣を敷いてた。

「ご謙遜を」

 見抜いてます的な雰囲気を醸す。

 勇者も政治を覚えたらしい。



 これが、あたしの...

 初面通しの時の印象だった。



 陣屋設営時には3千の兵があった。

 爺ちゃんが飛ばす()()()によって、皇帝の動向を知ることが出来た。

 結果、陣屋の設備は5千を収容できる規模へ。

「久しいな、ホーシャム・ロムジー殿」

 並び立つ剣の巨人。

 技のレイバーン、力のホーシャムとも評価される剣豪。

 まあ、どっちも対軍向きの剣術なので、大量破壊兵器である。

「キサマも相変わらずで何よりだ...」

 巨人同士で拳を突き合わせてた。

 そこは握手でもいいとは思うんだが。

 ふたりのジジイ同士、仲は悪かった。


 紹介状を持ってきた、あたしに対する第一印象も良くなかったもんなあ。

 ミロムさんを迎える数年前の話だ。

 孫娘みたいなのが二人になると、レイバーン卿も好々爺然へ。

「“竜”だが」

 あたしの話にフリたいのをぐっと我慢する爺ちゃん。

 うん、大人だ。

「いや、正確にいうと“蛟”という蛇の類でな。水属性と闇属性の確認がされている。まあ、水なのは水源を縄張りとしている時点で、な...闇だと分かったのは、水底みなぞこからの攻撃に際して影のような()()()が顕現したことによる」


「被害は?!」

 こうした情報の開示には犠牲が付きまとう。

 爺ちゃんも武人だから、血の匂いには敏感だったし。

 目の前のレイバーン卿の顔が曇ったのも見逃してなかった。

「甚大だ。水の化け物を相手に船は下策だと諫言はした...が、教会の連中に背中を押された連中の勢いがあった...その損失の御蔭で今の情報がある。犠牲者は農兵で2千、船は3隻だ」

 かなり大きめの船が失われたことになる。

 教会の加護を当然受けたものだから、実質的に王国内の教会派ってのも発言権を失った。


 ただ。

「恥の上塗り」

 諫言した剣星さまに献策が委ねられるんだけど。

 最初の失敗はすぐに忘れられる。

 仮に成功しても、犠牲の上の成功だと言われるんで。

 教会派の失敗であって、教会の権威が失墜することはないという。

「それが避けねばならない。どっちにしろ、()()()というのは勇者そちらが持っていくのだろう? ワシは一向に構わないが、主人の我が強いとお互い苦労するものだな」

 やや疲れ気味の剣星さま。

 同じ苦労を持つ爺ちゃんも苦笑してた。

「ま、お前さんが知りたいのは孫娘のことだろう」

 爺ちゃんの肩を叩き、

「筋がいい。魔法の才能が無い分、吸収が早い」

 ニマニマする爺ちゃんは珍しい。

 気持ち悪いやつって卿は言うんだけど、

「身内を褒められたら皆、こうなるものだよ」


「だな...最近、分かるようになった」

 レイバーン卿に孫が出来た訳じゃなく、あたしが剣術大会で準優勝したからなんだけど。

 年の離れた兄弟子に褒められたら、

 卿が嬉し気だったんで...たぶん。

「...っさて、策を考えんとな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ