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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の始末 6

 殊勝なことに後輩は、見舞いだという花束とともにきてくれた。

 服装は何処か他所他所しいというか、旅支度でも終えたような雰囲気で。

 外套に...

 衣の下は、リングメイルか?


 メイド服のミロムさんが、花を受け取り水場へ。

 彼女らしい気配りだと思う。

「どこへ行く気?」

 ()()()()に巻き込まなければ、あの街で揶揄われていたのは、あたしの方だ。

 いつもの宿屋で、

 賭けで負けて、酔い潰れたあたしを健気に介抱する。

 優しい後輩。

「分かっちゃいますか」

 うんうん。

 めい一杯、取り繕った顔だったもん。

 ミロムさんも見抜いてたぞ。

聖都ここまでは成り行きだったかも知れない。ま、正教会そっちに雇われてたこともあるけど」


「ええ、短期間ですね」

 つれないよね。

 いや、水臭いよねって言い換えよう。

「――報酬は出しました」

 受け取った。

 けど、それは半分だけだ。

「うん。でも、あたしを残して行くことはない!!」

 いや。

 さあ、出てきてよ...

「教会の仕事なら邪魔はしないが、旅の供としてならいい人材を知っている! 日当で良い、そうだなあ教会の者ならば金貨いやいや、銀貨も払えるとは思えぬ故。そうだ、私は気前がいいのだ!!」

 ちょ、ヒルダさん。

「日当は銅貨50枚。三食の面倒は教会で見てくれよ、それと...出来高の臨時褒賞があれば尚、良しだ!!! どうだ、破格だろう~♪」

 鼻歌が混じる上機嫌。

 こんな彼女も珍しい。

 師匠に気絶させられ、すっかり毒気が抜かれたようだ。

「えっと、これは?」

 困惑している後輩に、ここであたしが微笑んだ。

 いや、これを嗤うなって方が難しい。



 ミロムさんが戻り、

 女子3人で後輩を囲むシーンなんだけど。

 個室だった御蔭で随分と、くだけた女子会になった。

「あたしは未だ船を降りてない。いや、関わったことで、より抜け出せなくなったと感じてる」

 何故って台詞は、掛けた3人にも戻っていく。

 だってあの結社は、今の世界を壊すことが目的だからだ。

 あたしと、3人の友人とその周囲の人々にも影響する。


 例えば、あたし。

 独立している一個のエルフだけど、ツケ込んでた宿屋のおじさんや、教会の牧師さん。賭け仲間の猟師のおじさんに、その奥さん。えっとそれから、ギルド長に...武器屋のお姉ちゃんも、みんなみんな家族じゃないけど繋がってて、あたしはこの世界がキライじゃない。

 うん、それだけ。


 ヒルダは...。

 海向こうの帝国に籍を置く人間だけど、彼女自身も大なり小なりで人々から影響を受けてる筈。


 ミロムさんも、きっと同じだろう。


 後輩は?

「当方も、あの街の人たちが大好きです。鍛冶屋の娘さんに、甲冑屋のお父さん、養鶏家の伯母さまからいつも新鮮な卵を貰ってました。酪農家のおじさまはミルクを...懐かしいですね、先輩」


「うん、懐かしいね」

 昔話に花が咲き。

 大いに語らい合って、4人は結論を出す。

 旅立ちの決意。

 そこに、師匠の姿は無いんだけど――

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