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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
208/513

聖都の始末 4

「これで、()()()()か?」

 像の前に餅にも似たものを置く。

 言葉の真意を探られまいとする、偽装工作だけども。

結社かれらはあと幾つあるのでしょうか? この程度で瓦解するとも思えません」

 後輩の腹が鳴る。

 あたしを見舞いにくれば小腹くらいは、満たせられる()()があった。

 巡礼者が彼女へ、像に捧げたものと同じものを差し入れてくれた。

「これは?」


「そこの屋台で買ったものだ」

 狩って直ぐに、巡礼者も口にしたが。

 口端に白い粉が付く。

「見た目よりも少し...固めなのですね」

 平べったいパンに似たもの。

 ジャムか蜂蜜でも塗れば、ワンチャンス。

 それでも味が無いというと、少し悪い気がする。


 やや地味。

 味を強く主張することがないだけで。

 この白い粉にやや甘さをみる。

 うん、宗教国家で華やかな甘未があると思ってはダメってことかも。

 ()()

 柱の傍に獅子を押さえつけてた女神が、戦に赴いたときに持参してた非常食だったのを模したもの。

 こちらでは“戦煎餅”と呼ぶらしい。

 女神時代ものがたりでは、もう少し固く砕いて食す。

 出来れば汁などで浸して食べると、良いとか。


 今は、パンになった。

「正教会の調べでは、メガ・ラニア公国でもきな臭い動きがあるとのことだ」

 女神正教会の諜報機関“巡礼導師会ウォーカー”。

 牧師レベルにある元、冒険者や傭兵らを対象とした密偵たち。

 腕に覚えがある彼らが、各地で布教活動とともに斥候で身銭を稼いでいる。

 この諜報能力の高さがあるから、大陸の女神正教会はラグナル聖国とも穏健でいられたのだ。

「メガ・ラニア、ですか...」

 いい話は確かに聞こえない。

 ラグナルの東、コンバートルの北に位置し、国土の殆どが隆起した丘陵地にあって。

 さらに東に海を臨む、大陸の端っこという印象。

「海がある国だが、同系の国家としてみると内陸の国と大差ない。理由は、海に面した開けた地が無いからだ。隆起した土地柄か、海岸線は数百キロメートルに及ぶ断崖絶壁で阻まれており、打ち寄せる波は荒々しく激しい。癇癪持ちの女性のような...」

 後輩が咳払いをひとつ。

 癇に障ったようだ。

「断崖から沖までの数百メートルは、恐らく大陸棚がある。付近まで寄ったと思える船の残骸も見れるため、ま...流れ着いたとも考えられるが、断崖に打ち上げられたら壁と激しい波で、打ち壊されるのも時間の問題と言う、感じだ。こうして、公国は恵の海からも見放された形のようでな...人々の目は普段から死んだ魚のように見えるという」

 見てきた者たちの感想が入ってる。

 連絡係の()()()が、訪れたことはない。

 彼は、この聖都に根を張るお役目の人。

「そんな公国に何が出来ると?」

 貧しいから、傭兵仕事に手を染める。

 高原野菜として改良されるのは、もっとずっと後の時代のこと。

 麦も環境が厳し過ぎて自給自足の4割にも満たない。

 森に入って狩りをして肉を得ても、村の一握りはその日の食も得られない。

「今までの企みがそれぞれに、成功してたと考えると怖くならないか? 王国のクーデターからパワーバランスが無くなる。抱える魔法剣士は流出し、王国の武力は平均或いは以下になる。聖国の経済力と求心力は大陸の()だ。これらの信用がなくなった時、この大陸は...」


「混沌と化す」

 唾を飲み込んだ。

 白い粉を乗せたパンで喉が詰まりそうになる。

 やや咽て、巡礼者から水を頂く後輩。

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