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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の始末 3

 教皇庁を含めた区画の広さは、ネズミがマスコットのテーマパークの数十倍に匹敵する。

 教育区と観光区、行政区に商業区がある――聖都の中にある()()()みたいな位置づけで、教育区では全国から集まった神学生の面倒を見ている。

 全寮制だし。

 男女ごとにちゃんと建物や敷地が別で、おそらく生涯を通しても出会う事すらないだろう。

 教育区の目玉には、単に方角にちなんで置かれただけの“高等教育機関”の学校と。

 篩に掛けられた、神学研究者か枢機卿にのぼり詰めようとする、野心家たちの為の“最高教育機関だいがく”がひとつ設けられていた。


 ここで深く説明することも無いんだけど。

 紅の修道女こと、あたしの後輩も――女神正教会では、同一の教育機関“神聖大学校”なるもんで学び、異端審問官へと出世したんだという。あたしみたいに別の神を信奉し、女神が()()()()姉ちゃんたちと何ら変わらんと思ってる、不信人者を捕らえて再教育するのが...まあ、彼女たちのお仕事らしい。

 そんな押し売りはいらんて。


 さて。

 観光区についてだね。

 ここは、教皇庁の表向きな収入源だ。

 バイトとして、若い神学者たちが同宗教の信者たちに“祝禱きせき”を見せることがある。

 まあ、これも一つの布教活動なので。

 この世界の神様は赦してくれる。


 お布施は『王冠があれば、不問に処す』が合言葉。

 で、中央聖堂はその観光区の目玉施設である。

 庁内の宗教施設としては、幾分か重要度が低いんだけど...例えば、盗人が他人の家に押し入った時、荘厳で目に飛び込んでくるものに気を盗られがちなのが、中央聖堂だと思うといい。

 あれは家人の魅せ金庫みたいなもの。

 大事な施設は奥にある行政区のほうで。

 あたしらが行くことはない。



「首尾はどうだ?」

 巡礼者が柱のひとつに声を掛ける。

 その裏に、後輩の姿――町娘然として、中流階級に勤めるメイドのような姿。

 エプロンドレスには、フリルなどの飾り気がないものだ。

「もう少しオシャレをしても」

 巡礼者から見ても、紅との容姿差で服が()()()()()感じがした。

「いいんですよ。飾り気があると動きにくいんで。こう、ふわっとしてて...」

 修道服がローブだから余計に。

 巡礼者からすると、

《そこが可愛らしくなるんだから良い事じゃないか》

 と、意見の相違がある。


「コンバートル王国を貶めた結社の一翼が落ちました」

 巡礼者は粛々と礼拝に勤めている。

 隠れている柱の傍にも女神像がある。

 獅子の巨大な頭を地に押さえつけた半裸の女性は、左肩からそらに向けている。

 腕の先には稲妻のような鋭い刃が握られてた。

「この像、なんとも勇ましさがあるな」

 自分たちの対象者かみには慈愛がある。

 まあ、恥じらいながら地に膝をついた女神像が多数で。

 沐浴の様を切り取ったような、そんなシーンとか。

 まあ、やってるシーンも。

「竜を御するとは言っても、使役してるだけで滅するような荒々しいことはない。そう解釈した神学者が新たに興したとも言い切れないのだが...それでも、ここの聖堂にある像は、」

 巡礼者がフードの奥から周りの景色を眺めた。

 見渡せば、白亜に輝くふくよかだが、どこか屈強な女性像ばかりある。

 この土地柄の理想像かも知れないけども。


 うん。

 一見すると、半裸のヒルダさんでも見ているような気分だ。

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