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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の始末 1

 教皇庁にある大浴場に浮いているのは、エルフです。

 そう、のんびり浸かってたら唐突にヒルダさんから足蹴にされて、今、浮いているんです。

 失神。


 そんな可愛いもんじゃなく...半分、死にました。

 今、彼岸の向こう側におばあちゃんが手を振ってます。

 え? そっち行ってもいいの???


 そんなこたあない。

 浮いてたあたしを引き上げたのも、ヒルダさんです。

「や、ごめーん」

 ヒルダさんは偽名。

 大陸にある“ドーセット帝国”の皇女殿下である身分を隠すために。

 響きの似た言葉で組み合わせて、呼ばせてるもの。

 ただ、なんで()()

 そういう疑問が浮かばないことはない――帝国の皇族が何で市井で“剣”を振るっているのか。


 あたしにも皆目見当が。

「ほら、ほらほらおっきろー!!!」

 揺さぶるなあ~

 起こすなら手順を踏めー。

「ふんす、先ずは触診」

 そう。

 優しくね。

「じゃ、打ち身――外傷なし!」

 待て待て。

 首の後ろ、あたしは短髪だから見えるでしょ!

 そこ、そのあたり青くなって。

「ないな...あとはわき腹?」

 ちょっと見ないでよ。

 お肉摘まめると、気にしてるんだから。

「おお、意外にデブ」

 ひどーい

「この肉が胸にあれば、揉みやすいのに」

 あああー

 揉まないでよ~

 おっぱいは歳相応の成長ぶりなんだから、小さくても。

 や、や...な、なんか身体が熱く。

「うむ! 生理現象は普通、いあ、感度は良いな。TKBも陥没から勃ってきた」

 解説はやめて~

 ミロムさんには見せられませんが。

 今、湯船で()()()()()ました。

 磯っぽくして、ごめんなさい。



「大浴場で、大いに欲情しているふたりは何の韻を踏んだんだ?!」

 この浴場は混浴で。

 いあ、男女別の風呂というのは、一般的にはサウナだ。

 肌着一枚を身に着けて、皆が思い思いに長椅子に腰掛ける。

 足元からの湯気を浴びて咽るのが通説。


 咽る理由としてもっともな答えってのが、誰かの水虫の()()...とか。


 体臭がキツイと余計、咽るっていう報告もある。

 ただ、サウナでも汗をかくことで。

 身体的に良いとされる。

「兄上さま!!」

 声を掛けられ、師匠に背を見せてたヒルダさんが振り返る。

 遠心力で引き寄せられた、おっぱいが揺れた。

 胸筋だと思ってたものが、だ。

「「ま、マジか?!」」

 あたしと、師匠の声が重なった瞬間だ。

 まあ、あたしの場合は心の声音なんだけどね。

「??」

 兄に見られても平気な妹。

 うんシュールな気がするけど。

 カオスのような気も。

「まあ、いいから。今、お前が放り投げた、バカ弟子の回収を頼む。なんか目がくるくる回ってる感じで、本当に彼岸を渡りそうだ...」

 ヒルダさんの馬鹿力で、放られたあたし。

 浴場中央に設置されたオブジェクトと激突したらしく出血。

 湯船が赤く染まる大惨事。

 師匠に尻を見られるという屈辱も――。



 聖都の後始末は、わりとなんて言葉では叶わない。

 まず、あたしが“金色サイクロプス”としてやらかした方が甚大だ。

 商業区が吹き飛んだ。

 いや、正確には蒸発した。


 これは結社の老翁が招くはずだった、究極の自殺魔法スーパーノヴァよりも最悪なこと。

 彼の場合の範囲なんてのはたかが、10数メートルだ。

 攻城決戦魔法と対比には出来ない。

 あれは、そう。

 ごくごく一般的に、災害である。

「...らしくまとめるな、バカ弟子」

 覚醒したあたしはベッドの上。

 ここは病院である。

「ほわ?」


「商業区の出来事は、機密事項だ! 滅多なことを言うんじゃねえぞ」

 これは...

「口止めだ、バカ!!」

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