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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 60 甘くない沙汰 35

 老翁は最後。

 戦斧の一撃ではなく、彼シグルドを抱え込んで自爆呪文を組んでた。

 残りのスタミナと、命の炎で編み上げた術式。

 “超新星爆発スーパーノヴァ


 だけど、翁はひとり寂しく死んだ。

 脳幹を破壊され、パスの繋がった心臓も切り刻まれて。

 兄弟子“蛇目”のアイヴァーさんの仕事だったらしい。

「暗殺者が、真っ向から相手してどうするよ? ここはな...退場したと見せかけてだな」

 そうはいうけど。

 あなたは一度は本当に退場したんで。


 彼の目があたしに呼びかける。

 先ずは、その口にチャックな!と。



 陣地にひとり寂しくボロ切れのような、あたしが戻って来て。

 師匠は腹を抱えて笑ってくれた。

 いや、いいよ。

 そういう態度もあるだろうし。


 現実に。

 あたしのセルコットとしての仕事は無かった。

 集団に揉みくちゃにされて、それこそ圧死するんじゃないかって状況だったし。

 抜けだしたら、シグルドさんに『囮になって惹きつけろ』って味方の邪魔をしてしまった。

「で、今まで何してんだよ」

 涙を零して嗤い転げてる。

 いいさ、ヒル...ダさん?

「ああ、こいつな失神してるんだ。情けねえだろ、天下無双の暗殺王女さまがだよ」

 師匠も大人げない。

 妹なんだから、可愛がって。

「ま、それよりも」

 ふんふん鼻を鳴らす。

 師匠があたしの周りを踊るように嗅いで回ってて。

 な、なんです。

「磯の香りもしねえな」


「ここは内陸ですし」


「いや、バカ弟子のことだ。ひとり臆病風に吹かれて...ひと潮、噴いてきたとも考えたんだが」

 いやいや。

 そんな不謹慎なことはしません。

「火が点いてたから、おしっこで消そうとは思いましたが。あたしでも出来ることってそれくらいしか...思いつかなかったって言うか。でも、火傷しそうになったんで直ぐに()()()()はやめたんですよ!!!」

 ちょっと洒落に乗ってみた。

 嗤いも欲しかったけど。

 これはもう、自虐で突き進むしか。


「じゃ、お前は巨大な太陽を見たか?」

 どこで?

 らしく...惚ける。

「いや、バカ弟子にそんな余裕は無かったな」

 いつまでも子ども扱いしてくれて助かる。

 シグルドさんの肩を借りてガムストンさんも、帰還してきた。

「じゃ、太守殿! 凱旋と行きましょう」

 師匠は何もしていない。

 でも、これが師匠のデフォルトだ。



 結社“金脈”の残党狩りは聖都の守備隊に一任された。

 この情報も、マディヤ・ラジコートの耳に入っている。

 そして彼は、メガ・ラニア公国の手前“シェロン”交易都市へ入城してた。

 人口百万人の交易中継都市である。


 聖都での企みが成功していれば、この交易都市に出回っていた聖都の白金貨が、贋金として中傷されて各地の金相場に対し、大きな傷跡を残すはずだった。

 マディヤは水煙草を燻らせながら、

泡沫うたかたの夢と消えるか」

 呟くだけに留めた。

 老翁の手助けは出来なかった。

 既定路線の逸脱は見えていた。

「やり過ぎた、だけって言えますよね」

 青年の脇に和装の男が立つ。

 懐に腕を仕舞いこんで、脇で暖をとる。

 少し肌寒く感じた。


「団主は最初はなから切る考えだった...」

 納得がいかないので機密にケチをつける。

 盛り上げてくれた老翁は、功労者だ。

 その腕を簡単に切ったわけで。

「そりゃ、胸の内に留めましょう」

 口に出していい物じゃないと、肩を揉んで諫言する。

 彼自身が分かっている。

 団主の行動に疑問を持つな。

 団主の言葉は絶対である。


 でも...

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