表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
199/510

聖都の攻防 55 甘くない沙汰 30

 太守兵たちの置き土産から手頃な長剣を握って。

 手に馴染むというには、少し柄が長すぎるしやや重心が、切っ先の方に偏っているようにも思える。

 長剣だと思ったけど。

 よくよく見てみると、あたしには両手剣トゥーハンドにも。

 いや、見渡せばそこらかしこにと、落ちている剣でも良かったんだけど。


 やっぱ咄嗟に掴むのなら――「我が前に敵は無し、我が背後は焦土のみ...我を封殺することは出来ず、この一歩にすべてを賭ける!!! 帝国式剣之一法・天照アマテラス

 ドーセット帝国の武術を収めた“七法”は門外不出という事は無い。

 かの国の認可を得た兵法家が各地で教えているので。

 気が向いたら師事することもできる。


 まあ、それなりの実力が伴うのだけど。

 あたしの場合は、各地に転戦しているうちに自然と、帝国式の所作ソレに振れることが出来ていたというか。

 ま、気に入られたっていうか、そんなとこ。

 ゆえにヒルダさんの初見殺しだって対応できたわけだ。



 で、剣之一法・天照は本来、幻術ではじまり幻術で終わる“光属性”の奥義みたいな性質があった。

 対峙した武芸者から“光”を奪い、混沌へ叩き落す。

 暗闇の中にある対象者に、それまでとは逆に強烈な光を当てて、視力を完全に消失させる。

 そんな補助魔法込みのサシでしか成立しない、幻術の剣。

 あたしも(道場主から)喰らった対象者の一人で。

 耐性異常の無効化があっても、非常に眩しかったことを今でも忘れられない。


 じゃ、火属性しか使えない...あたしの場合はどうか。

 なんてことは無い“リーズ王国式抜刀術・炎閃ほづつ”のソレそのもだ。

 両手剣なみに重量の偏りのある長剣の切っ先に、まるで太陽のような炎の塊を顕現させる。

 これを念じて突き出すだけの簡単な作業。

「ちょ、ま、待て!!!」

 しなる槍の刺突を狙ってたガムストンさん。

 踏み込んだ瞬間、回避不可の帝国式の理不尽をモロ受けしたことになる。



 伸びてたヒルダさんは知らない。

 が、太守陣地から目撃してた()()は、帝国式の亜種だと勘付いたようで。

 彼がミロムさんの尻肉を揉みながら...

「あれは、帝国式が剣之一法・天盃にちりん。対攻城戦用の奥義だった筈だが...この大陸にいや、軍神しじぃ以外の使い手がいるとは知らなかった」

 なんて告げてたとか。

 ま、これの顛末は片目をひどく充血させて戻った頃に、ミロムさんか聞いた話だ。

 後輩の方は、ちょっと気合が入ったようで。

「ミロムさん!」


「はい?」

 やや拍子抜けするような声で返答し。

「当方に剣術をご教授お願いしたい」

 こんな言い方しかできない後輩だけど。

 根は凄くまじめでいい子だ。

 あたしたちと同じ道に入るのは良いんだけどね、その動機が――「当方の手で必ずや、姐さんの仇を盗ると決めたんです!!!」って事なんだけど。あたし、死んでないし殺されるつもりも無いんだけど...。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ