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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 53 甘くない沙汰 28

 オークニーの大老の前に若い商人が身を晒した。

 手には獲物の長剣が握られてて。

「ふふ、そんなにはっきり切り捨てられると...交渉できないじゃないか」

 小剣との相性はやや不利。

 相手を懐まで飛び込ませないなら勝機はあるんだろうけども。

 対峙すると、力の差は歴然だと知覚した。


 ああ、これ俺死んだわ。

 って、死にざまが脳裏に広がってた。

「...だけど、結社の長としては下がれねえなあ」

 首を狙った一撃を弾けきる。

 仰け反った身体は胴の周りがガラ空きとなってた。

 飛び込んだ同僚が、横に跳んで回避。

「ちぃ、マジかよなんて瞬発力と判断力だ!!!」

 長剣の斬撃は残ってる状態で利き腕は伸び切っている。

 それでも、胴を狙った同僚の頭の位置に切っ先が伸びてた――「キサマも二刀流か!!!?」


 首を傾げられて。

「さあて」



 一流の冒険者vs暗殺者殺しの対峙。

 んー。

 やっぱり、この構図はおかしい。

 なんで、あたしはガムストンさんと戦ってるんだろう。


 上階の方では激しい剣戟が聞こえてくる。

 単純な武力なら、猟犬は恐ろしく強く、化け物じみたタフネスさがある。

 上方の相手も、相当な手練れと感じる。


 距離を詰めかねているガムストンさん。

 彼は自身の腕鎧を外してた。

「ああ、火傷か?!」

 相性が悪いと再確認したようだ。

 太い首から鈍い骨の音が聞こえる。

 いや、その音って今...折れた?

「軟骨を鳴らしてるだけで折れちゃあいない。心配、ありがとうな...金色の」


「う、うむ」

 やや鼻で嗤われたような気がした。

 やっぱり炎の攻撃で、あたしだと身バレしたかな。

「俺はこの拳ひとつで身体を張ってきたが、拳闘士になる前は...これでも騎士だったんだぜ」

 あ、うん。

 冒険者でいられる時間は短い。

 だからこそ一つの職業を、限界の更に先まで伸ばす傾向にあって、転職はあまりお勧めできない。

 けれどもそこに例外がある。


 ケースとしては過去を棄てた場合。

 と。

 自分探しのケースがある。


 拳闘士が刃物を使わないことはない。

 使わないという思い込みはよくない。

 けど...剣士や騎士のような捌きの冴えが無いんだよね、彼らのでは。

 ガムストンさんは、床に刺さった槍を握る。


 え?!


「目の炎にも表情があるのか、まったく面白いヤツだな?」

 咽る、あたし。

 追い詰めたと思ってた。

 騎士にジョブチェンジしたところで、()()()なら相手じゃないと。


 奢ってたのは、あたしの方だ。

「ん。まあ、こんなとこか」

 ひゅんひゅん風を切って奔る刃は、切っ先が見えない。

 準備運動のための模擬演武。

 あたしの心の中で“神の賽”が振られた――出目は、6と4の10。

 ファンブルじゃないけど、ギリ回避ってとこだろう。

 幻術で耳をエルフらしからぬ種族に変えているけど。

 その下を今、切られた。

 掠っただけだと思うけど...ヤバイ、見えない。

「ふ、あれに反応して見せるかね?」


「傷を負わせるか」

 傷口を炎で焼く。

 応急処置――帰ったら速攻で治癒水溶液ポーションを呑まないと、みんなにバレる。

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