表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
196/508

聖都の攻防 52 甘くない沙汰 27

 エントランスホールに、太守兵の姿は無い。

 気絶して動けなくなったヒルダさんも、屋敷の外へ運び出されて。

 あたしのエネミーサーチには、シグルドさんらが結社の実力者たちを追い詰めるシーンが脳の片隅に見える感じだ。もしも、この鉢合わせがスムーズに「今宵はひと時の間だけ、()()()に関係なく手を取り合って共通の外敵に当たらん!!」なんて纏め上げていれば、だ。

 結社に迫ってたのは、あたしたちだったかも知れない。


 そう。

 シグルドさんらを出し抜いてだ。

 さて、この状況は。

「俺の拳の前に余所見とは!!」

 余所見をしてた覚えはない。

 そもそも、ガムストンさんを相手にだ。

 彼のような一流冒険者はそこらへんに転がってる魔獣や、猛獣とは別の次元にある。

 気が抜けるはずはない。


 それでも、あたしが余裕たっぷりに見えたのは――えっと、何故?


「誰がだ!」

 このムーブでのあたしは言葉の端々に“悪意”がある。

 だって、そうで()()と。

 碧眼のハイエナが設定したからだ。


 ガムストンさんの右ストレートに合わせるように。

 殴り返した。

 あたしの拳には炎が乗る。

 火属性の魔法しか使えない、パッと見ならばとんでもなく苦労しがちな、魔法使いだ。

 でも、全属性に高い耐性と適応力がある点はメリットで。

 神様からの贈り物だと言われた。


 あ、いや。

 炎が効かない魔物と出会ったら、即OUTなんだけどね。

 そこで、あたしは躊躇なく帝国式の門を叩いた。

 ヒルダさんの知らないとこで...門下生になる。



 ガムストンさんの伸ばした腕に、あたしの腕が触れる。

 硬い外皮に覆われた魔物は少なくはない。

 むしろ、そういうのが殆どだと冒険者組合で知ったくらいだ。

 魔法使いになる道では、

 マナの取り込み方や、或いはオドの使い方を学ぶ。

 魔法使いとは自分勝手な生き物だと、知ることから始まると言ってもいい。

 で、冒険者組合――ギルドでは、外皮の攻略方法について当たり前の様で、あたしには難しい“耐性”について講釈してくれるわけ。

 じゃ、あたしならどうしたのか。

 帝国式七法の拳闘術を極めることで解決。


 火属性によるスリップダメージを対象の外皮内側に叩きこむ、だ。

 ガムストンさんの腕鎧が熱の膨張で弾け飛んだ。

 右の手首から肘に掛けた腕が痛々しいまでの水膨れに。

 あわわわわわわ...

 ちょっと火力を間違えた。


 拳がすれ違うだけで、彼が大きく仰け反る。

「逃げているのは、お前の方だろう? 木偶が!!」

 ああ、言葉が悪い。

 ごめんなさい、ガムストンさん。

 あたしじゃないんですぅ~



 さて結社の方は、シグルドさんを含めた一組の猟犬に睨まれてた。

 猟犬の獲物は腕に隠れるような身の細い小剣で、これを二刀で八の字に構えている。

 利き腕が僅かに下がっているのは、たぶん彼らの癖だろう。

「“金脈”の翁殿はいずれか?」

 柱に隠れてやり過ごしてた商人は、シグルドさんに引きずり出されてた。

 運が良ければ逃げれるとも、考えてたけど。

 今、命の灯が消えたようだ。

「どうあっても殺すようだな」


「ええ、残党として残られても、世界にとって一利なし」

 言いきられると、返す言葉もなくなる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ