聖都の攻防 50 甘くない沙汰 25
あけまして、おめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
抱負らしい抱負はないんですけど、とにかくこの作品が、他のいろんな読者さんに刺さるといいなあって事でしょうか。
さんぜん円ねこ
「役人には敵が多い。彼の国内でも、暗殺されかけたことがあると聞く...そんな人物がなぜって疑問が湧かない筈も無いんだが、国外で家族とバカンスをすると...まあ、普通ならしない、大人しくするはずの人物が来る」
仰向けだったあたしが転がる。
ベッドの端に来て――あ、なんか自由人。
「潮吹っ掛けられたんで、腹いせに剥いた。正直、俺の感想だが...エルフってのは、乳房をどこに置き忘れてきたんだ?」
顔が真っ赤になる。
たぶん耳まで真っ赤で上下にぶんぶん動いてたに違いいない。
「まあ、落ち着け。ここで火炎球飛ばせば、下宿先にて待つ娘に見つかるは必然。放たれた場所が知れたら、うう~ん...お前はどんな言い訳ができるのかなあ」
揶揄われてるのは分かってた。
何も無いとは断言できないけど、転がってた時。
床から壁に向かって梨汁のごとく果汁のように噴射した後があった。
我ながら見事な吹き出しっぷりだ。
「...、仕掛けさせる為では?!」
ほうって声が漏れた。
「豆腐頭では無いかと思ってたが、それなりには」
「(ギルド長の膝が開かれ、あの凶悪な黒いのが良く見え...)俺も、この流布された情報は囮だと思っている。が、冒険者ギルドとしてはその役人が本人であろうと、無かろうと関係なく守護しなければならない!!」
まあ、当たり前すぎた。
その時のあたしには、そう思えたんだけど。
「守護にはシルバーが少数、カッパーが多数との報告を受けている。支部長の俺の意見も聞かずに、だ。これは、陰謀だよ上だけで決めた陰謀だ。俺はこの企みに異を唱える!! そこでセルコット、お前の出番って訳だ。とにかく、煮詰めるぞ! お前の新しいデビューを飾るためのな!!!!!」
で、始まったのが。
“金色のサイクロプス”プロジェクト。
今世紀最強の“暗殺者殺し”というキャッチフレーズと存在証明。
あの後は、数々の任務を遂行したなあ。
デビュー戦も華々しかった。
◆
ヒルダさんの大剣を退かせると、後輩からの組手の受け流し。
太守サイドの兵士、私兵が手を出せるようなレベルの戦いでは無かった。
いや、下手に割り込んでたら死人が出ただろう。
「おら、どけやー!!」
ガムストンさんが乱入してきた。
彼も“迷いの森”に嵌り、便所の扉を何度も、何度も、何度も開いては閉じの繰り返し。
中の住人から「いい加減に扉、開け閉めすんじゃねえよ!!」って切れられたとか。
人、居たんだの方が驚きだ。
「猪突猛進、」
予備動作もなしに足を払い、大柄な彼の脇からすり抜けた。
ガムストンさんは、超近接攻撃を得意とする。
冒険者の最高ランクに到達していると、余計なことに戦闘遍歴などが記録されている。
本来は部外秘なんだけど。
そこは奥の手とか何とか。
大きな男が兵の群れの中へ落下していく――彼の訴えるような目に「おまえも、冒険者か?!」ってな、声なき台詞が紡がれた気が。
冒険者同士、かつ高ランクであれば仲間の戦闘歴の閲覧は可能だ。
理由としては当然、パーティを組む時の参考である。
そもそも敵対なんて事は、ギルドが赦さないからだけど。
あたしは肩を竦めてた。
「さあて頭は冷えたか?」
そろそろ結社を屠りませんか...。
って意見をまとめたい。
だってこの戦いは私闘でしかないし。
あたしの体力が削られる。
せっかくのドライアイ防止のコンタクトも。
こんな無駄な戦闘で灼け、いや溶け落ちてしまいそうだ。
だ・か・ら...