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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 48 甘くない沙汰 23

 例えば、ひとつの演劇があるとする。

 幕が明けて、晴れ舞台に立った役者たちがあるとする。

 あたしらはそう、端役だ。

 客はあたしらの事なんて気に留めてない。


 主役たちの袖に右往左往している、黒っぽい何かみたいな。

 ヒルダさんの魔力乗せ斬撃は、魔力で補強された館の一部を力任せに吹き飛ばしてた。

 うーん、この一撃が主役――つまりは、結社の長老らを追い詰める――シグルドさんらには、当然、当たらんのだろうと思われる。だからぶっぱしてもと、思ってた奔目に猟犬のひとりが彼方に消えた。

 あれ?!

 えええ?

「あて、ええ?!」

 咳ばらいをひとつ。

「よせ、被害が大きくなる。このゴリラ娘が!!」

 金色のムーブは口が悪くなる。

 そういうロールプレイングだってことは分かってたけど。

 今までの雑魚会敵は、これで凄むだけの簡単な仕事だった。

「ゴリラ?! 誰が...」

 ヒルダさんの目に殺気が。

 今まで以上である。

 彼女のボルテージが上がるとオーラの色が変化する。

 まあ、ひとつの同じ檻の中に、ライオンとネコが入った雰囲気である。


 それが何を意味するのか。

 あたしが3枚に...おろされるという事だ。

 やっば、死亡フラグきたー!!!



 動揺を見せるのはプロではない。

 ここは、顔に“認識疎外”の魔法をひとつ。

 帝国式と王国式の剣術は、どの国のどの流派ともに一つの基本で成り立つ。

 鍛え抜かれた体幹だ。

 本物に似た、幻覚以上の幻覚を見せてやれば――効いてください、神様あー。

「ど、せっい!!」

 ヒルダさんの力任せの大振り。

 剣圧だけで周りの兵士が吹き飛ばされる。

 うん、これ食らいたくなああああいぃぃぃぃ。


 局所的条件の“足場崩し”、魔法使いたちの間では“なまず”と呼んでいる。

 船酔いにも似た気持ち悪さと、腰から滑るように力が抜けるので――地震で地滑りでも起きたかみたいな表現となっている。初見殺しの技でもあるんだけど、分かっていても防ぐのに難儀するもののようだ。

 あたしは生来の“状態異常無効化”によって酔った()()しかできない。

 ヒルダさんの体幹が崩れ、剣圧も抜けた。

 そこへ、大剣の真横から裏拳を当てる。


 ま、難しいことじゃないけど。


 あたしの腰に提げてる小剣は流石に見せられません。

 とくに帝国式七法なんて、それぞれが達人を生み出せる頂きがあるのに。

 その一つしか極めなかった帝国の姫君にだ。

 あたしの剣は、正体を明かすに等しい。

「う、裏拳?!」

 ヒルダさんから女の子()()()悲鳴がもれ。

 いや、あれ違ったかな。

「うぎゅ」

 用具部屋へと飛び込んでた。

 何度も開け閉めしてた部屋だったし、えっと。

 良かったね、入室できて...だっけ?


「さて、紅の...キミは、そんなシャンデリアの上で何を?」

 いやほんと、マジで何をしてるんです? 後輩ちゃん???

「ふっ(勝ち誇ったようなすまし顔、前髪を2本の指で払い除け)...っ、ここにあれば貴様の幻術など喰らわぬであろう!(殺意に満ちた視線と、しもやけにかじかんだ指から伸びた氷の刃)どうだ、これは完璧だ。当方、天才の頂に立ったという事だろう」

 可愛い。

 めっちゃ、可愛い。

 え、そんな表情かおもするんだ。

「うん! いいねえ。ゴリラもといライオン娘の剣圧に飲み込まれんとして、足掻くために逃げ込んだ先としては重畳である! 認めよう、少女よ君は()()()()!!!」

 最後の締めは、あたしの本音が飛び出してた。

 ああ、やっぱり引いている。

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