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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 46 甘くない沙汰 21

 兵士の群れに消えるあたし。

 見送るミロムさん。

 出遅れたと叫ぶ、後輩。

 何気に笑顔なシグルドさん?!



 オークニー商会館からの攻撃は二種類あった。

 弧を描いて飛んでくる矢は馬上弓によるもの。

 直線的に飛んでくるのは機械式の石弓によるものだった。


 さて、あたしは。

 潰され、蹴られ、群衆から弾き飛ばされたボロ雑巾――それがセルコット・シェシー、さらっとしてた金髪に、土を被ったみすぼらしさ。ところどころに誰かの足跡が残るフード付きローブは、一張羅だったのに散々な目に遭った。

 蹴りだされた先は路地の裏。

「ナイスな脱出です」

 手を差し伸ばしてきたのが、微笑んでたシグルドさんだ。

 先ず、こうなっる事を予測してたという。

 次に、背中を弾くようミロムさんにお願いしたのが、この御仁だと知る。

「死ぬかもで...」


「状態異常無効化のあなたが、不慮などの事故で死ぬ訳がありません。状態異常という範囲は狭いようで実のところ、かなり大雑把な範囲でしてね。(あたしを起き上がらせ...)事故死も状態の変化だと感知されて跳ね除けようと作動すると言われてます」

 んな、アホな。

 いや、親戚のババアがなかなか死ななかったのも...まさか?!

「(一張羅からの埃を払いながら...)ま、これらは古い文献からの受け売りでしたが、今のセルコットさんで確定したとも言えますね。殺意を持って殺されるか、或いはその加護そのものを断ち切るアーティファクトで無ければ、自然死さえも跳ね除けかねない」

 状況は飲み込めた。

 要するに、イチかバチかの賭けをした、と。

 ま、そこで怒るのは野暮か。

「で、群衆から弾き飛ばされたあたしに、戦場に戻れと?」

 正直、戦力にはなると思う。

 相当な天然という目で見られてるかも知れないが。

 そこは師匠が――。


 あれ、ここに師匠は?

「彼なら、太守陣地を護ると言ってましたよ」

 おっと生来の怠け癖が。

「まあ...こちらとしても“金色のサイクロプス”と対峙する他人ひとの目が減るのは願ったりです。これよりは、魔界こちら側の死の天使として働いてもらいますよ、セルコットさん?」

 とうとうきた。

 暗殺者ムーブの時間だ。



 屋敷の中へ一番槍よろしく突貫したヒルダさんは、魔術結界“()()()()”に嵌ってた。

 魔術による結界というのは、三半規管を狂わせるものが多い。

 人間を含めた精霊も、自身に備わっている()()に頼って生きている。

 この感覚を狂わせるだけで、簡単に遠ざけたり逆に、引き寄せたりすることが可能だ。


 で、この時のヒルダさんは。

 同じ扉を何度も、何度も、何度も開いている。

 同じ動作ではなく、その場でひと回転してみせてから同じ扉を開いているのだ。

 本人の目には。

 霧がかった大広間に無数の敵が蠢き、なぎ倒して進んだ先の扉を何度も開いているような、幻覚の中に囚われてた感じだろうか。進めどすべて狭く行き止まりの納戸ばかりの部屋――襲ってくるは、悪鬼羅刹のごとき亡者ども――それ、太守公の兵士たちです、ヒルダさん!!!

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