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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 44 甘くない沙汰 19

 倉庫街の戦闘に続き、邸宅のある居住区でも戦闘が始まった。

 居住区に回された都市警備隊の兵士は、完全武装のが20人。

 軽装備のが30人という構成で、片手剣と丸形盾を装備していた――これらの配慮は、居住区にある館の住民が、素直に投降に応じるであろうと打算してのことだ。兵士の姿を見せれば、怖気づくのではないか、とかそう、考えていた。

 まあ、ほかには。

 居住区の方は騒ぎを大きくしたくなかったってのもある。


 それぞれの屋敷感覚は広く、大きな通りで区切られている。

 仮に飛び火したとしても、ボヤで済むかもしれない。

 太守の甘い見積もりがそこにあった。



 内側から吹き飛ばされた扉の下敷きになった兵士が死んだ。

 蹴り飛ばされた破片などで串刺しになったのではなく。

 ただの板切れとなった、扉の一部に真正面から捌き切れずに受けて死んだようだ。

 また、扉だった板を抱いた兵士の肉塊に、巻き込まれて複数の軽歩兵らが負傷してもいる。

 二次被害の方がちょっと深刻だった。


 さて、こうやって数を減らされた都市警備隊だけども。

 太守に魅力がなかったら、早晩にも瓦解していたかもしれない――「騎士、兵士諸君に告ぐ! 槍を取れ!」馬上にあった指揮官が、兵士たちと同じ地に足をつけた。

 戦友と肩を並べる、いい響きだし。士気も自ずと上がるものだ――「...剣の柄を我が胸前に、我、ここに誓わん! 常に諸氏より前で戦うと!!!」鼓舞挙げは成功している。


 100人隊の隊長だった将校が、いつもの半分の兵力を率いて居住区に立つ。

 50人たちにも不安はあった。

 馬上の将校が臆病風に当たると、さっと逃げることがあるから。

 平民を囮にする貴族は少なくはない。


 だけど、杞憂に終わる。

 各人の背中をバシバシ叩いて歩く隊長。

「諸君らと同じ平民出身から兵卒あがりだ。もっと気楽に構えろ!」

 肩の鎧が邪魔だけど、揉んでくれてるのは分かる。

 硬く縮んでた心が解けるような、感じ。



 居住区でも「戦闘が開始されました」と、告げられた。

 太守の本陣は()()()()()と退くよう、進言される。

 魔法詠唱者協会からの助っ人は、各地に散っている。

 剣士ポール君は居住区へ。

 暗殺者のトッド君は倉庫街へ。

 最後に巨躯の完全武装男、ガムストンさんは商業区に。

「それぞれに戦端が開いたのだとすると、敵方やっこさんらの方が早くに、布陣し終えてたって事で分かり易くねえか?」

 ガムストンさんの言葉の裏には、裏切り者の示唆がある。

 シグルドさんも眉の毛を弄りながら、

「結社のひとりが捕縛されることは織り込み済みだったとも...とれる」

 太守陣地には濃い男たちが集まってる。

 2メートルちかい巨躯で、風貌ともに鬼人オーガを彷彿とさせるガムストンさんからすると、周りのシグルドや師匠ローゼン、ウイグスリー商会の私兵らは子供にでも見えるのだろうか。

 まあ、威圧感は素晴らしく、確かに子宮が疼く感じがする。


 小首をかしげながら、ヒルダさんが歩み出る。

 師匠に「お前の出番はない」とか押しとどめられながらも、

「私から一言いいでしょうか!?」

 見下ろす大男。

 見上げる気丈な野蛮な姫。

「ふんす!!」

 気合とともに拳で語る。

 ガムストンさんの巨躯が僅かに宙に、浮いた気がした。

 いや、気のせいではない。


 浮いたのだ。


 鎧の内側はジンジンと鈍痛が響く。

「驚いたな!!」

 巨躯が浮くのも、浮かせたのが女子っでのも初めて見た。

 ああ、ヒルダさんはミロムさん並みの怪力だわ。

「えっと...セルコットさん? 今、何か良からぬこと考えました???」

 メイド服のままのミロムさんが、あたしの背後に立つ。

 これだよ、これ。

 暗殺者殺しのあたしにさえ悟らせない、殺気殺しの達人。

 こええよ。

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