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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 40 甘くない沙汰 15

 ラグナル聖国の首都である、聖都のつくりは古風の地を行く。

 かつての文明が履かせた石畳の痕跡を上手く、都市機能に取り込んでいるつくりとなってた。

 例えば、主要な道は街道から引き込んでいる。

 交易路や、村や町をつなぐ街道は山道と大差がない。

 整備をしないと、路肩の草が地肌の道を覆い隠してしまう――道の舗装などは未だ、考えに至らない文明レベルだと思っていい。

 ゆえに、馬車が使えない旅人は専ら歩き旅が常識である。


 どこか前に語ったけど。

 乗合馬車の運賃ってのは、馬の頭数で違いが出る。

 だって、あれも生き物だよ?

 メシを食わせなきゃいけないし、休養とかいや、街に着いたら厩舎に預けなくちゃいけない。

 その預け代なんかも、乗車代に含まれる。

 まあ、あれだよ。

 馬車を使えるヤツってのは、ブルジョアってこと。



 さて、石畳の効果についてか。

 歩き旅の人々が苦しんでいるのが、足元の道。

 どこへ行っても不整地ばかりだからね。

 聖都でも不整地のままは未だ、いくつも残ってるし。

 その殆どは、整備不能地区――つまりは、貧民街なんかになるかなあ。


 整備された道の上を歩くのは、苦痛から解放だ。

 小さな石でも、上に乗り上げてしまうと足首を、右に振られ左に振られと動かされる。

 これが適宜に繰り返されたら。

 苦痛と一緒に肉態的な疲労は高まる一方。


 メリットは大きいけど。

 デメリットの方はスリップ事故の多発。

 ここで再び、古代の人々は凄い――って文献持った学者が叫んだらしい。


 古代人に倣い車輪用の轍溝を用いて、このスリップ事故の回避につなげたのだ。

 幸い、聖都でも石畳が敷けているのはごく僅かなので、轍溝も長大なものでは無いらしい。

 これらは金が掛かるらね。

 さて、その道に今、金属のクリーブが擦れる音が響く。

 ガチャガチャなんてもんじゃなく。

 まあ...

 ジャリジャリってな音色のように思えたね。


 この集団は、太守公とその守備隊。

 あたしと仲間たちを巻き込んだ、結社と戦うための戦友たちってとこか。



 軍靴の足音が黄昏時に響く――オークニーの翁は太い首を捻る。

 鈍い音が響く。

 集会で集まった者たちも私兵を携えてた。

 この地が決戦になる事は分かっているからだ。


 臆病風に後ろ髪を引かれた者たちは逃げた。

 が、太守が動けなくとも()()見逃すはずもなく――「街に放っていた()()たちにより離脱者すべて“狼”に狩られたよし」――天井裏からの声。

 盗賊ギルドから雇用した者たちの最後の仕事だ。

 これ以降、彼らは結社に加担しない。

「諸君、最後のようだ」

 大老が立ち上がる。

 毛皮を脱ぎ去ると、金属の胸当てに物騒で兇悪なガントレットの装備。

 ジジイの癖に大層な重武装だと思わせたが、まま様になってもいいる。

「くそー、これで終いですか...大老ボス?」

 各々商人たちが、舌打ちと悪態をつき始める。

 やや柄が悪い。

 若い長の方は面食らってるんだけど、うなじを掻きながら察した。

 金脈の男たちは猫を被ってたのだと。

「聖都に根付いて20年。各地で散々暴れまわり、首に賞金も賭けられた我らだが。まあ、結社を次代に残せなかったのは...流石に心残りでは、ふっ」

 嗤う。

 雑談みたいな集会が、今はピリッとした熱がある。

 大老の立ち絵だけで、皆が奮い立ってる感じ。

 ちょっと、これ...全面対決になるんじゃ?!

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