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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 37 甘くない沙汰 12

 そして、時は元の時間軸へ。


 遠巻きにランタンの灯りをぼんやりと浮かべ。

 こう、腕つかって大きく“()”を描いて見せる。

 太守館の城壁の裏手には、都合よく衛兵の姿が無く――「普段は、このあたりに警備の2、3人がいるんだけど。理由わけあって貰った金貨でひとつ賭場に行ってもらってる。...んー、まあ、なんつうか守銭奴の俺がカネを渡すのは不自然だと思って、カミさんにちょっとな」――と、ローゼンが何も知らない態の素振りで、後頭部でも掻きながら傭兵らの引き手になる。

 不自然に思ってた傭兵たちも。

 ローゼンの言葉には自然と納得したように。

「なるほど、案外、あんたもワルじゃねえか」

 感心してくれる。

 いや、警戒心が急に無くなった。


 小物の商人は、全身黒づくめの外套を頭から被る。

 やや、悪目立ちしている感はあった。

「もっと普段通りにすればいいのに」

 シグルドのぼやき。

 相棒であるローゼンは、肩をすぼめて。

「いやいや、旦那のご配慮痛み入りますよ。ほら、あれ、あれだ! 少しでも目立たない様にしてくださっているのさ。傭兵の旦那衆もわざわざ金物類よろいを脱いで来られた」

 なめし皮の鎧くらいは着ているし。

 その下にはリングメイルだって。

 ただし、ローゼンの言のように、細心の注意は払ってた。


 その証拠に――「この門は内側からこちらの手合いで守らせてもらう」

 50名近い傭兵から、5人ほど離脱する。

 門番のいない城門の物騒なことは無いし、仮に他の衛兵に見つかったとしても、逃走経路である門さえ死守できれば結社と繋がりのある()()だけは、逃がすことが出来る算段だ。

 ま、傭兵たちはこの死地に赴く前、死を覚悟しての儀式は済ませてある。

「まあ、お好きにどうぞ」

 ローゼンは小首を傾げる。



 さて、一行はシグルドの灯したランタンとともに進む。

 太守館と宝物倉庫との導線は無い。

 いや、地上では繋がっていない。

 宝物倉庫は裏門から2つの門の中にあって、袋小路なつくり。

 聳え立つ絶壁のような城壁の上部に小屋がある。

「あれは、矢を射かける櫓ですね」

 ローゼンが告げた。

 倉庫の屋根に上っても、櫓へ飛び移れそうにもない。

 と、同時にかの小屋からは丸見えと言う構造――宝物に目が眩んだ賊は、裏門からほぼまっすぐこの袋小路へと向かう。其処へ待ちかねたように矢を番った弓兵が、櫓から射かけるのだと考えると...背筋が寒くなった。

「しかし、ここに運び込んだ宝物は溜めるだけかね?」

 商人の好奇心。

 持ち出すとなると、いささか不便のような。

「いえ、裏手から入ったが故に袋小路に見えるだけで、守備側からすれば見えないところに導線があるんですよ。例えば...」

 と、シグルドが傭兵の右わき腹あたりに指を差し向ける。

 鈍く光る穂先がぬっと。


 ぐうぁあっ

 なんて男の野太い声が闇に木霊する。

 商人は足をもつれさせながら、荷駄車の上に転げ落ちた。

 打ち所が悪かったのだろう、そのまま失神してしまったようだ。

「は、謀ったなあ!!」


「ちと、古い手だが。ここまで踏み込んだ()()()()が間抜けって事で駄賃はいらねえぜ!!!!!」

 シグルドも腰に提げた両刃のショートソードを抜いてた。

 ローゼンの方は、倉庫街の闇に溶け込み退散。

 師匠、何してんの。

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