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守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
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聖都の攻防 34 甘くない沙汰 10

 秘密を隠すのならば、秘密だとバレにくい場所に隠す――木を隠したいのならば、森に隠せ――である。

 さて、魔界の猟犬たちは、大芝居を打つことにした。

「芝居ですか?」

 シグルドを名乗る猟犬がしかめっ面で唸る。

 人物評としてのプロフィールは完璧だと自負していた。

 今ならば渡された台本を()()で、すらすらと暗唱できるといった具合。

「アホか!」

 スリッパで叩かれた。

 それ、ヒルダさんのだ。

 猟犬仲間か、いや、およそ上司っぽい感じの方。

 彼女へスリッパが丁寧に返却された。

「な、なにを!」

 あたしをスカウトした、シグルドが吠える。

「――親にもぶたれない者が成長など...ん?!」

 いささか不穏な空気が流れ、

 鼻をつまんで、皆の顔が曇る。

 あたしも似た表情になってた――どゆこと?

「早すぎます。ネタの仕込みが間に合いません」

 と、シグルドからの抗議。

 ネタかー、なんの?

「これは古すぎる」


「もーそういって、誤魔化すから」

 ローゼンの方は役作りでなく、素である。

 本人がもしも市井で女を囲み――「そんな不誠実なことは、せぬ!」やや憤慨に憤ってみたけど「支給品の鎧一式すべて賭けて、尻の毛を毟り取られるまで俺は賭け抜く」と、ろくでなしの台詞が吐かれた。

 これが台本要らずの犬畜生である。

「犬はないだろ、犬は...あれは優秀で」


導師せんせいは、黙って村長に徹してください」

 シグルドも、ローゼンの頭を弾き。

「なんでだ!!」

 って師匠が声を荒げてた。

 その新妻役をなぜか、あたしがやる。

 師匠に手作りのお弁当を差し入れするとか、慣れないことをしなくちゃならない。

 これで、本当に騙されてくれるのだろうか。



 太守領の片田舎“ビーマム”村。

 人口よりも畜生の数の方が多いとされる地で、無邪気に子供たちが走り回っている、長閑な雰囲気。

 小物の交易商は、行商に来たという体裁でここにある。

 あっちもあっちで大変だ。


 本物の村をひとつ丸ごと貸し切って。

 その中身だけ入れ替えた、壮大な舞台装置。

「い、いい...て、てんきぃ~で、ですねぇー...」

 小物が口を開くとぎこちない挨拶をする。

 村人Aが凍り付く。

「て、て、て...」


「えっと、この村に何か()()()?」

 双方、舌足らずになる。

 脱字発生中だけども、取り繕う島もない。

 いや、ここで村人も上がり症だとすると、普段から行商人も来ない僻地ってことになる。

 不審以外の。

「主人はあがり症で申し訳ない」

 龍海商会によって手配された傭兵が、見かねて代弁者となる。

 ま、帰還したならば「手柄は俺の者だからな!!!」と、主張する事も織り込み済みで。

「ん、あああ。ええよ」


「この村出身の者について尋ねたいのだが、よろしいか?」

 何事ってな流れで、長老と思しきジジイとババアが村の入り口に集まる。

 どっちかと言うと入口じゃなく、もっとズカズカと村の中に入ってくるものとばかり思ってた。

 が、意外にシャイだったという。


 これは、オチ?

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