表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守銭奴エルフの冒険記  作者: さんぜん円ねこ
177/506

聖都の攻防 33 甘くない沙汰 9

 龍海商会の応接間には、目を細めている面長の初老と野心家な小物があった。

 時に金貨回収作戦の差配に取り組んでいた。

 夜半に荷馬車を繰り出す――7時間前の頃である。



「それで?」

 似顔絵は二枚。

 簡単な人物評価の書類と、警備状況に関するものが数点。

 卓上に広げられてあった。


 人物評の主役は。

 師匠の“ローゼン”と猟犬の“シグルド”である。

「こちらの者はつい最近、嫁を貰ったとのことでして。何かと物入りの様子」

 そんな男が賭博に熱を上げている。

 理由は一攫千金でもって、嫁さんを楽させたいとか。

 それらしい野望ゆめを語った。


 と、いうか...それ、信用できるん?

「ふむ」

 ほら、疑ってるよ?

 小物の商人は繕うように、

「こちらのシグルドは彼の、まあ...巻き込まれやすい体質の様子。悪友であるローゼンにカネを恵んでやるくらい貸していると。どちらも、はした金で動いてくれる良きコマでしょう!!!」

 そういうのは信用できない。

 仮にそんな言葉を付け加えても、やはりカネの積み方でコロコロと態度を変えるだろう。


商売人として力量を問われるのは、やはり目利きの方であろう。

 これは人物の評価も然りである。

 龍海の会長も、訝しんだまま顎のちょびちょびの髭に手を這わさせている。

「上辺だけならば、貴殿の言うように食い詰めているように思える。が、いささか不自然さも同時に感じられないだろうか?」

 と、問われて小物の商人が明らかに不機嫌な声音を吐いた。

 鼻息の荒い溜息は、少し前に景気づけだと呑んだワインの()()であるんだけど。

 結社の末端構成員と、大手商会の会長とでは先ず“()”が違う。


 そもそも対等でもないのだ。

 オークニー商会という後ろ盾か、庇護のもとで――面会して貰えている状況ことに、小物の商人は気が付かないといけない。

 それが“格”なのだ。

「貴殿が調べたのは、一行の余地はある。が、これは二人が同郷の士であって、この聖都に出てきた後の略歴でしかない。人は変わる...その根っこを調べてきて初めて! その人物の評価をいや、値踏みするのが商売人であろう。原産地は重要だ...どんな宝石いしも産地で輝きも変わるし、箔もつく...作戦決行までまだ、幾分か時間はあるだろう」

 要するにアラ探しをして来いと、言っている。

 憤るところは分かる。

 小物とて場数は踏んできた。

 単刀直入に『お前の調べは甘い』と突き返してもらった方が諦めがつくものだけど。

 龍海の会長は、そのあたり結社の上司らとは少し優しい人物だった。

 それが余計に腹立たしい。

「で、どこまで?」

 皮肉に『奴らが未だ受精卵だった時まで遡るか?!』とか放ってみたかった。

 が、口に出さなくて良かったと思う。

「この出身村の青年だった頃くらいで性格と、行動理念が分かるだろう」

 と、告げたからだ。



 ローゼンとシグルドの兄弟分は、聖都から少し外向きの郊外。

 太守領の片田舎にある“ビーマム”という村で育った――人口はわずかに100人ちょっと。

 子供の数が多く、大人と呼べる者の数が極端に少ない。

「妙な()()がする」

 絹の布で鼻と口を覆う小物の商人と、傭兵ふたり。

 あまり大勢で押しかけると警戒されると踏んだ。

「どなたでしょうか?」

 村長は高齢である。

 約80度ほど前傾姿勢で。

 杖を左右に揺らしながら近寄ってくる。


 うん、この御祖父ちゃん...漏らしてる。


 この人から、う〇この匂いが。

 香し過ぎて卒倒しそう。

「元凶はお前か!!?」

 つき飛ばそうかとも思ったけど。

 村長さんが察して距離をとってた。

「いやあ、申し訳ねえですねえ。さっきまで捻ってたもんで拭かずにきちまって...」

 あ~あ。

 なんて声が重なる。

「んで、何用です?」

 えっと、何しに来たんだっけ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ